大分裁判員裁判併合審理へ、被害者の意向確認されず
2010/06/03 裁判員裁判を希望しない被害女性の意向を汲んで、いったん強姦罪で逮捕・送検されながら、大分地検が強姦致傷罪で起訴した事件が、加害者が起こした別の強制わいせつ事件と併合審理されることが明らかになりました。
強制わいせつ事件も本来であれば裁判員裁判の対象とはなりませんが、被害者が裁判員裁判に納得しているかどうかは明らかにされていません。
この事件は、2009年9月、女性が大分市で性暴力を受け、頭などに全治約5日間のけがを負った事件で、大分県警は、「事件を知られてしまうかもしれない」と裁判員裁判を希望しない被害女性の意向を汲んで、強姦致傷罪ではなく強姦罪容疑で、加害者を逮捕・送検していました。
しかし大分地検は4月27日、この事件を裁判員裁判の対象となる強姦致傷罪で起訴しました。大分地検の検事は、「法と証拠に基づいて適切に処分した」と説明しており、被害女性が同意しているかどうかについては明らかにされていません。
裁判員制度の設計段階で、対象犯罪の2割を占める性暴力については、まったく議論が行われず、被害者や支援者からの聞き取りもなされませんでした。
その結果、「一定の重大犯罪」というくくりで、強姦致傷罪や強制わいせつ致傷罪などは裁判員制度の対象に、強姦罪や強制わいせつ罪は、従来どおり職業裁判官による裁判とされました。裁判員裁判もしくは裁判官裁判のふりわけは、起訴罪名によって自動的におこなわれ、被害者に選択権はありません。
裁判員制度における性犯罪事件審理について、メンバーの傍聴や新聞記事をもとに分析を行った「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」では、「望まない被害者に裁判員裁判を強制すべきではないし、被害者が裁判員裁判を望まない場合、本来より軽い罪で訴えざるを得ないような制度は問題である」としています。