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韓国:日本軍「慰安婦」・原爆被害者の個人請求権放置に違憲判断

2011/09/01

韓国の憲法裁判所は8月30日、日本軍「慰安婦」被害者や在韓被爆者らの個人賠償請求権について、韓国政府が日本と外交交渉しないことは、被害者の基本的人権を侵害し、違憲であるとの判断を下しました。

日本の政府・裁判所は、1965年の日韓請求権協定を盾に、個人請求権を否定してきましたが、同協定3条は、両国で紛争が起きた場合、外交的努力と仲裁によって解決することとしています。日本軍「慰安婦」制度被害者や原爆被害者ら約2400人は、韓国政府は解決努力を怠り、被害者の基本的人権を侵害しているとして、憲法裁判所に違憲審査を申し立てていました。

この判断を受け、韓国挺身隊問題対策協議会が発表した「公開書簡」は以下の通りです。

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「日本軍『慰安婦』問題解決の努力なき国家不作為は憲法違反、被害者の基本権侵害」という憲法裁判所決定を厳重に受けとめ、迅速な外交的措置の履行を韓国政府に促す

金星煥外交通商部長官殿

 2011年8月30日、憲法裁判所は、韓国政府が日本軍「慰安婦」被害者の賠償請求権に関し具体的解決のために努力していないことは被害者の基本権を侵害する違憲行為であるとの刮目すべき決定を宣告した。これは、去る2006年7月5日、当時存命していた日本軍「慰安婦」被害者109名が「日本政府に法的責任があるにも関わらず、外交通商部が韓日請求権協定の解釈と実施による紛争解決をおこなわないために、被害者の財産権、人間の尊厳と価値および幸福追求権、外交的保護権を侵害したもの」だとして訴えた憲法訴願審判請求(事件名:2006헌마788、大韓民国と日本国間の財産および請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定第3条不作為違憲確認)への宣告として、請求後およそ5年余りをかけて成し遂げられた。

 日本植民地時代に日本軍性奴隷として連行され残酷な人権侵害を経験した日本軍「慰安婦」被害者たちは、数十年にわたって日本政府を相手に困難な闘争を繰り広げてきた。自国民の被害を解決するために外交的努力を果たすべき責任がある韓国政府の対処が微温的かつ傍観的であるなか、被害者たちは日本の裁判所へと、国連へと、世界各国へと巡り歩き、日本政府に問題解決を促す活動を自らおこなってきた。1992年から約20年のあいだ街頭で毎週水曜日に、韓国政府による積極的対処を訴え、日本政府にたいし問題解決を促してきた。日本軍性奴隷制によって受けざるをえなかった苦痛と、解放後も続いた社会的無関心、冷遇そして韓国政府の無責任のなかで、被害者たちは二重三重の苦痛を受けなければならなかった。
 こうした被害者たちにとって、憲法訴願審判請求は韓国政府に積極的役割を果たすよう促す国民としての最後の手段だった。

 これについて憲法裁判所が、具体的解決努力をしなかった韓国政府にたいして、憲法に由来する作為義務に違反し被害者らの基本権を侵害したものとの判決を下したことは、日本軍「慰安婦」被害者と彼女たちを支援してきた多くの人々にとっての希望となった。

 その反面、すでに国際社会でも「世界に類例を見ない残忍な犯罪」だと糾明された日本軍「慰安婦」問題が、なぜ実際の被害当事国である韓国政府にかくも長いあいだ背を向けられてきたのかを考えると、その挫折と怒りの深さは測り知れないほどだ。

 被害者たちが日本軍「慰安婦」被害を自ら証言し、民間団体とともに世界各地で止むことなく訴えを続け、日本政府に向けて問題解決を直に要求してきたこの20年間の闘争に比して、外交通商部をはじめとする韓国政府が傾けてきた努力とは果たしていかなるものであったのかを、今回の憲法裁判所の決定を受けて真摯に重く省みることを願う。

 この間、日本軍「慰安婦」被害者たちは日本政府がその責任を果たすことを要求して、日本政府および国会の代表と面談し、日本の裁判所に謝罪と賠償請求の訴訟を提起してきたが、どれも判決は敗訴とされた。日本政府はこの過程で、韓日協定によって日本軍「慰安婦」問題についての賠償問題はすでに解決したという立場を一貫して主張してきた。それでも韓国政府はこれにたいし公開の反駁さえまともにおこなわず、沈黙することで結果的に日本の立場を幇助する事態を招いた。

 2005年、韓日協定文書の全面的な公開によって、日本軍「慰安婦」被害問題が協定に含まれておらず法的責任が残っているという事実を政府自らが確認し、それに伴って韓国政府の役割と義務も正式に確認された。以後、韓国政府は日本政府にたいして法的責任を追及しつづけていくという方針を明らかにし、これは国連人権機構および国際法律家協会などの意見に遅ればせながら足並みを揃える進展だと思われたため、被害者たちは再び韓国政府の努力を期待し新たな希望を抱いていた。

 しかしその期待が失望へと変わるのには、それほど長い時間はかからなかった。その後も韓国政府は、日本軍「慰安婦」問題解決および法的責任を追及する韓日間の外交的措置など、国家次元での努力を果たさなかった。結局、韓日協定文書公開から約1年後の2006年7月5日、高齢の被害者達が最後の期待を胸に憲法訴願審判請求訴訟をおこなうという事態にまで至ってしまった。
 8月30日の憲法裁判所の決定宣告がなされるまで待ち、この5年余りの時間が過ぎるあいだに、審判請求当時は109名だった請求人のうち48名が死亡し生存している請求人は61名だけとなった。

 韓日請求権協定によって日本軍「慰安婦」被害者たちの賠償請求権は消滅したという日本政府の主張にたいし正式に公開的に反駁し、外交的解決努力を傾ける責任が韓国政府にあることは紛れもない。憲法裁判所の判決で明らかにされているように、「外交通商部が紛争解決の手続きへと踏み出す義務は、日本軍により恣行された組織的かつ持続的な不法行為によって人間の尊厳と価値を深刻に毀損された自国民らが賠償請求権を実現できるよう協力し保護すべき憲法的要請によるもの」であるのは当然のことだ。したがって「その義務を履行しないことは憲法に違反するもの」であり「請求人らの基本権が重大に侵害される可能性がある」という判決を、外交通商部は真摯に受け止めるべきだろう。また、「『あらゆる請求権』という包括的な概念を用いてこの協定を締結した韓国政府にもその責任があるという点に注目するならば、その障害状態を除去する行為へと踏み出すべき具体的義務がある」との決定もやはり明確に注視すべきだろう。

 特に、日本軍「慰安婦」犯罪が有する人権蹂躙の深刻性と被害者たちに重ねて加えられている被害の持続性、被害者たちが高齢であることによる切迫性を考慮すれば、この事案は韓国政府がいかなる外交懸案よりも優先して解決すべき緊急懸案である。政府はこれ以上、高齢の被害者たちと関連民間諸団体に日本軍「慰安婦」問題解決のための努力を転嫁してはならない。

 よって私たちは外交通商部に要求する。憲法裁判所の判決を謙虚かつ重く受け止め、日本軍「慰安婦」被害者たちの名誉と人権回復のための政府の外交政策を計画し、日本政府にたいし問題解決を積極的に促し、日本の行政府と立法府を相手に実質的解決が可能となるあらゆる外交的活動を即刻履行せよ!

2011年8月31日

請求人 姜日出、吉元玉、金福童、朴玉善、李順徳、李容洙等、請求者61名
韓国挺身隊問題対策協議会
ナヌムの家
挺身対ハルモニと共に行動する市民の会
憲法訴願審判請求訴訟代理人 李錫兌、崔鳳泰弁護士等23名

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