「日の丸」「君が代」強制裁判:最高裁が過重な処分は違法判断
2012/01/19最高裁第1小法廷で1月16日、教育現場への「日の丸」「君が代」強制に対し、職務命令を拒否して懲戒処分を受けた都立高校教員らが処分取り消しと損害賠償を求めた計3件の訴訟の上告審がありました。金築誠志裁判長は、戒告を超える重い処分については、裁量権を超えて違法であるとして、原告の一部について、停職および減給処分を取り消しました。
1999年の国旗国歌法成立時、政府は起立や斉唱を「強制しない」と答弁していたにもかかわらず、東京都教育委員会は、教員や生徒たちに強制を行い、処罰を科しています。最高裁は2011年に、「日の丸」「君が代」への起立・斉唱を強制する東京都教育委員会の職務命令は、憲法が保障する「思想・良心の自由」には反しないとしながらも「思想・良心の自由を間接的に制約する面がある」としていました。しかし今回、最高裁は憲法判断を避け、裁量権の濫用があったか否かについてのみ判断を行いました。
懲戒処分のうち、もっとも軽い「戒告」は、「直接、職務や給与に不利益を与えず、懲戒権者の裁量の範囲内」であるとして正当化する一方、それより重い減給以上の処分については「慎重な考慮が必要」としました。しかし、「過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものである場合」には停職処分も許容されるとして、根津公子さんに対する停職処分は適法とされました。処分のエスカレートに一定の歯止めをかけてはいるものの、思想・良心の自由の保障という観点からは非常に問題のある判決です。
5人の裁判官中、反対意見を述べた宮川光治裁判官は、「教育公務員には特別の自由が保障されているが、都の通達は価値中立的な意図で発せられたものではなく、不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制することにある」と指摘、「人権の尊重や自主的に思考することの大切さを強調する教育実践を続けてきた教育者としての信念に起因する不起立行為は、非行・非違行為とは次元を異にする。式典の進行に影響はなく、たとえ戒告でも懲戒処分は重すぎる」と述べています。
【報道】
「減給以上「慎重に」 日の丸・君が代訴訟で最高裁初判断」中日新聞(1/17)