富山地裁:性暴力被害者への執拗な示談交渉に違法判断
2012/01/30強かん被害を受けた女性が、執拗に示談を迫ったとして計880万円の損害賠償を求めた訴訟で、富山地裁が12月14日、弁護士の活動を違法と認め、弁護士に33万円、加害者に550万円の支払いを命じていたことがわかりました。原告と被告の双方とも、判決を不服として控訴しています。
加害者の男性は、2003年の強かん事件で2010年に懲役3年6ヶ月の実刑判決を受けていました。
判決によると、女性は示談を強く拒否していましたが、弁護士が女性の住所を伝えたため、加害者の家族が女性宅を訪問しました。弁護士はさらに、女性の家族にあてて「女性は検察官に都合よく利用されているが、裁判が終わると不要品を捨てるように相手にされなくなる」などと、示談を迫る手紙を送っていました。女性は「男の家族がまた訪ねてきたらどうしよう」とパニックになるなど、精神的苦痛を受けたと主張していました。
判決は、「示談に応じないという女性の意志は極めて明確で、示談交渉が不可能であることは客観的に明らかであるにも関わらず、繰り返し示談を迫ったことは、女性の感情をさらに傷付け、苦しめるだけ」だと指摘。犯罪被害者等基本法の趣旨を損ない、正当な弁護活動を逸脱しているとして、違法と認定しました。
示談成立によって刑の減軽を図ることは、弁護活動の一環としてしばしば行われていますが、今回の判決は、性暴力被害者を二重三重に傷つけるような弁護活動に歯止めをかけるものとして注目されます。
【報道】
●「賠償訴訟:性犯罪被害者に示談強要「違法」 弁護士に支払い命令--富山地裁」毎日新聞大阪朝刊(1/21)
●「賠償訴訟:犯罪被害者に、弁護士示談強要 「女性の苦痛消えぬ」判決受け専門家ら、第2・第3の被害心配性 /富山」毎日新聞地方版(1/22)