アフガニスタン:女性の権利を「和平」の犠牲にしてはならない
2012/07/10東京で7月8日、アフガニスタン支援国際会合が開催されたのと時を前後して、「姦通」を犯したとして告発された若い女性が、タリバーンによって公開処刑されたことが明らかになりました。
処刑は、首都カブールから車で1時間ほどのパルワン州の村で6月23日頃に行われたものとみられています。メディアが入手した3~4分程度の映像には、150人ほどの男たちがとりかこみ歓声をあげるなか、ひとりの男性が、ひざまずく女性の後頭部に銃弾を撃ち込み、彼女が倒れた後も、死体に何発も発射する様子が記録されています。
処刑の背景については、いくつか異なる説明がされています。同州のスポークスパーソンによれば、殺害された女性はナジバさんという20代の女性で、他の男性と関係をもったために夫により処刑を執行されたとのことです。しかし、村の武装集団メンバーであった夫がタリバーン兵を殺害したために復讐として妻が殺害されたという説や、政府に情報を流していたタリバーン兵といっしょに逃亡していた女性だという説もあります。
真相がいかなるものであるにせよ、事件は、アフガニスタンの治安が非常にもろいものであること、タリバーンが依然として女性に対する暴力をもちいて、地域の人々を恐怖に陥れる戦術をとっていることを示しています。東京会合では、2014年にISAFが撤退し、権限委譲が完了することをにらんで、アフガニスタンの和平と持続的開発に向けた国際支援の枠組みが話し合われましたが、その基盤となる治安は非常に脆弱であり、とりわけ女性の権利にとって深刻な影響をもたらす可能性があります。
女性たちにとって主要な懸念のひとつは、アフガニスタン政府がタリバーンと進めようとしている和平交渉によって、女性の権利が脅かされることになるのではないかということです。東京会合に先立って、アフガン女性ネットワーク(AWN)が現地の女性たちとの協議をもとにまとめたポジションペーパーは、「和平プロセスは、正義と透明性、アカウンタビリティの原則にもとづくべきであり、元兵士の社会への再統合のために、女性を犠牲にするようなことがあってはならない」として、和平・再統合プロセスに女性たちが参加することは不可欠であると強調しています。また、AWNは、「アフガニスタンにおいて民主主義と説明責任を実現するためには、市民社会、とりわけ、家父長制と闘い、包括的で公正な社会に向けた変化の担い手となる強力な女性団体の存在が不可欠である」として、ジェンダー予算配分による女性NGOの支援などを求めています。
東京会合で国際社会とアフガニスタン政府が採択された東京宣言は、「国連安全保障理事会決議1325号の観点から、市民社会組織と女性団体の参加の重要性を強調」と述べています。これを言葉だけに終わらせないために、アフガニスタン政府だけでなく各国政府や国際機関の実施責任を、市民社会が注意深く監視していく必要があります。
【報道】
●NY Times (7/9) In Video of Execution, Reign of Taliban Recalled
●Reuters (7/8) Locals vow revenge for Afghan woman’s execution
【参考資料】
●AWNポジションペーパー(英語版)(PDF)
●AWNポジションペーパー(アジア女性資料センター訳 日本語版)(PDF)
●外務省「アフガニスタンに関する東京会合」