マレーシア:ムスリムMTFの権利を高裁否定
2012/10/16イスラム教徒の男性が女性としてふるまうことを禁止するイスラム法(シャリア)はマレーシア憲法に違反するとして、トランスジェンダー女性4人が起こしていたマレーシア初の裁判で、ヌグリ・スンビラン州の高裁は10月11日、4人の訴えを却下する判決を下しました。マレーシアのLGBTコミュニティからは、抑圧の悪化を懸念する声があがっています。
マレーシアでは、イスラム教徒にのみ適用されるイスラム法のもとで、イスラム教徒(ムスリム)の男性が女性の服装をすることや女性としてふるまうことが禁止されており、違反者には罰金や禁固刑が科せられます。原告の4人は、これまでも女性の格好をしたことで警察に摘発された経験をもっています。
彼らは、イスラム法にもとづいて審理をおこなうイスラム法廷ではなく、すべての市民を対象とする非宗教法廷において、異性装を禁止するイスラム法は、性にもとづく差別禁止と表現の自由を保障しているマレーシア憲法違反であるとして、裁判を起こしていました。
しかし法廷は、4人がムスリム男性であることを理由に、イスラム法が適用されるとして、4人の訴えを却下しました。判決ではさらに、トランスジェンダー(TG)支援団体は、TGの人々にカウンセリングをうけさせるよう、イスラム団体と協力すべきだとも述べています。
非宗教法廷によるこの判断は、ムスリムに対しては憲法よりもイスラム法が優先されるということを示唆しており、ムスリム市民の基本的権利について非常に深刻な問題を提起すると法専門家は指摘しています。LGBTコミュニティや支援者らは、この判決によって、すでにある差別や迫害がいっそう悪化するのではないかと懸念の声をあげています。
マレーシアでは教育省が「LGBTの症状を防止する」ために学校カウンセラーや保護者への教育を指導するなど、ムスリムだけでなく市民一般を対象に、LGBTの権利に対する国家の抑圧が続いています。
【報道】
●NY Times (10/11) Malaysian Court Rejects Challenge to Cross-Dressing Ban
●Bikyamasr(10/11)Malaysia’s transgender lose court battle over dress
●The Malaysian Insider(10/12)Court ruling on Muslim transsexuals raises alarm over Islam‘superseding’Constitution