ストーカー被害への抜本的対策強化を:女性団体が緊急声明
2012/11/22神奈川県逗子市で11月6日、女性が元交際相手の男性に殺害された事件を受けて、「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」ほか、アジア女性資料センターを含む48団体は、11月19日に緊急声明を発表し、ストーカーによる犠牲者を出さないための抜本的な対策を求めました。
報道によれば、加害者は2006年頃から嫌がらせメールを送りつけ始め、被害女性は今回の事件までに計4回警察に相談していました。
2011年6月には逗子署が加害者を脅迫容疑で逮捕、7月には神奈川県警がストーカー規制法による警告を行い、同年9月に加害者は脅迫罪で懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けました。
その後も加害者の脅迫行為はやまず、今年3月下旬から「別の男と結婚するのは契約不履行。慰謝料を払え」といった内容のメールを2週間内に1000通以上送りつけていました。
しかしストーカー規制法ではメールの連続送信は規制対象とされておらず、また、文面に「殺す」というような文言がなかったことを理由に、逗子署は捜査を終了していました。
さらに、昨年6月に逗子署が加害者を脅迫罪で逮捕する際、被害者の結婚後の姓名と住所を読み聞かせてしまったことも明らかになっています。
昨年12月には長崎西海市で、ストーカー被害にあっていた女性の親族女性2人が殺害される事件が起きました。これを受けて今年8月には警察庁が「『警察改革の精神』の徹底のために実施すべき施策」を示していましたが、悲劇を防ぐことができませんでした。
DV防止法における保護命令は、被害者の申し立てにより裁判所が発令するのに対し、ストーカー行為規制法における禁止命令は、警察の申し立てにより監督機関である公安委員会が発令することになっているために実効性が弱いことが指摘されています。女性に対する暴力専門家は、ストーカー規制法の強化にくわえ、DV防止法で未婚カップルを対象に含めることが必要だと指摘しています。
今回の緊急声明では、「ストーカー事件の加害者は執拗で、決してあきらめるということをしない。現場の警察官はストーカー事件の本質をきちんと認識し、細心の注意を払って被害者の生命を守ることを何よりも優先するべきだった」と、警察の対応を批判し、「メールをつきまとい行為に含めるといった小手先の修正にとどまらず、本当に被害者の命を守ることのできるストーカー規制法に改正する必要がある」と指摘し、以下の5つの点について要請しています。
1.全ての警察官を対象に、ストーカー事件を始めとする女性に対する暴力事案について、犯罪の本質を理解するための特別研修を実施すること。研修の実施に当たっては、被害当事者や支援者など、警察外部の講師を招聘すること。
2.ストーカー事件を始めとする女性に対する暴力事案について、被害者の安全を守るための具体的で実効性のある捜査マニュアルを作成し、全ての警察官に携帯させること。
3.つきまとい行為にメールを明文化することはもちろんのこと、被害者が申し立てることによって接近禁止命令が出されるようにするなど、被害者の安全を守ることができるようにストーカー規制法を抜本的に改正すること。
4、DV防止法の対象を「配偶者等」と拡大し、恋人、元恋人などの交際相手を含めること。ストーカー事案についても、保護命令及び緊急一時保護の制度を活用できるようにすること。
5、 「探偵業の適正化に関する法律」の第六条(探偵業務の実施の原則)「この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない」について、ストーカーやDV加害者からの依頼によって被害者の居所を探してはならないことを徹底すること。