日弁連 非婚の母に寡婦控除適用を
2013/01/25日本弁護士連合会(日弁連)は1月11日、死別や離別によってシングルマザーとなった女性に適用される所得税法上の寡婦控除が、非婚のシングルマザーに適用されないことは合理的な理由のない差別であると指摘し、寡婦控除を「みなし適用」するよう求める「要望書」を発表しました。
これは、2009年11月に、非婚のシングルマザー3人が行った日弁連への人権救済申し立てを受けたものです。
寡婦控除は、もともと戦争未亡人を援助するためにつくられた制度で、所得税は27万円、地方税は26万円が所得から控除されるしくみです(所得合計が500万円以下の場合、「特別の寡婦」として8万円の割増控除)。しかし税法上の「寡婦」は、法律婚をしたことのある者と定義されているため、非婚のシングルマザーの場合には適用されません。
そもそも母子世帯は平均収入が一般世帯の半分ほどにすぎず、シングルマザーの貧困が子どもの貧困にもつながっていることが指摘されています。なかでも非婚の母子世帯の場合は、遺族年金の支給がなく、持ち家率も低いなど、離別・死別の母子世帯よりもいっそう生活困難に陥りやすい状況にあります。全国母子世帯等調査によれば、母子世帯の平均収入は、死別の場合288.1万円、離別の場合219.5万円、非婚の場合は171.1万円となっています。しかし、もっとも収入の少ない非婚のシングルマザーは、寡婦控除が受けられないために、課税額を基準として算出される健康保険料、保育料の額、公営住宅の家賃なども高く算定されてしまい、不利益を被ることになっています。
一部の自治体では、こうした不平等を避けるため、非婚のシングルマザーを離別・死別のシングルマザーと同様にあつかう「みなし寡婦控除」を行っていますが、申立人らの居住する自治体では、そのような措置がとられていませんでした。
日弁連は、非婚のシングルマザーに寡婦控除が適用されないことは、法の下の平等を保障した憲法14条に違反していると指摘し、離別や死別のシングルマザーと同様にあつかう「みなし寡婦控除」を行うよう、総務大臣および申立人らの居住する自治体首長に要請しています。
シングルマザーでつくるNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」は、日弁連の「要請書」を歓迎し、全国の自治体においても寡婦(夫)控除のみなし適用を速やかに採用すること、および法律の改正を求めています。
●日弁連要請書