フランス:欧州人権裁判所が「ブルカ禁止法」を支持
2014/07/09 2013年11月に23歳のパキスタン出身のフランス人女性が、イギリスの弁護団とともにフランス政府を相手に「ブルカ禁止法」が差別を含むとして訴えた裁判で、7月1日、欧州人権裁判所は同法を支持する判決を下した。
女性は、本法律を非人道的かつ尊厳を傷つけるものであり、プライバシーの権利や思想、良心、宗教、言論の自由に反し、差別的であると訴えていた。また、あくまで彼女自身が公の場でのブルカ着用を求めているのであり、家族や近親者からブルカ着用を強制された訳ではないこと、治安上の理由で必要なときは脱いでも構わないことも主張した。
本法律は、あらゆる人が公の場で顔を覆うことを禁じたものであり、違反者には最大150ユーロ(約2万円)の罰金が科される。しかし、実際に法によって拘束されるのはブルカやニカブを身につけるムスリム女性が多く、ムスリム女性への差別だとして批判を受けていた。2011年にフランスで制定されると、同様の法律が2011年にベルギーでも制定され、後にイタリア、スイス、デンマーク、トルコやロシアの一部地域でも同様の法律が制定された。一方で、フランスや国際的に活動する女性の人権活動家たちは、同法を男性中心主義的な文化の強制から女性を解放するものであるとも主張していた。
フランス政府は女性の主張に対し、ムスリム女性への差別を意図したものではなく、公の場でのあらゆるベールの着用を禁ずるものであり、バイクに乗る時以外のフードやヘルメットの着用も禁ずるものであることを主張した。欧州人権裁判所は、前回一致で、原告女性は差別の対象ではなく、同法律は人々が共に生きる社会を維持する上で合法であるとの判断を下した。
今回の判決に対し、国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルは、表現の自由、信仰の自由を著しく侵害するものであるとの声明を出している。
【報道】
●AFP(7/2)仏ブルカ禁止法は「信教の自由侵害せず」、欧州人権裁
●Guardian(7/1)France’s burqa ban upheld by human rights court
●Reuters(7/1)European court backs French ban on full-faced veil
【関連】
(海外ニュース)フランス:ブルカ禁止法成立