安全保障関連法案強行採決に対する抗議と廃案を求める声明
2015/07/23 安全保障関連法案強行採決に対する抗議と廃案を求める声明
2015年7月23日
特定非営利活動法人アジア女性資料センター
2015年7月15日の衆議院特別委員会、翌16日の本会議で、政府は集団的自衛権の行使を認めることを中心とした安全保障関連法案を強行採決した。特定非営利活動法人アジア女性資料センターは、暴力のない公正で平和な社会の構築に取り組むフェミニスト団体の立場から、この強行採決に強く抗議するとともに、法案の即時廃案を求める。
7月17、18日の共同通信社世論調査によれば、安全保障関連法案の今国会成立に対する反対は68.2%となり、7月18、19日の朝日新聞世論調査では、安倍内閣の女性の不支持率は前回の43%から50%に大きく増えている。民意を無視した国会運営は決して許されるものではない。
21世紀の現在、世界で展開されている戦争は、先進国を中心とした「対テロ戦争」と、それに対する抵抗勢力の武力行使という構図が台頭している。「対テロ戦争」の名のもとに行われる多国籍軍による武力介入は、しばしば途上国に対する侵略行為を正当化することによってなりたっている。日本が憲法を破壊し、集団的自衛権を解禁することは「対テロ戦争」の名のもとに行う侵略行為に自衛隊が積極的に参画させられていくことを意味する。
20世紀は戦争と暴力の世紀であり、2つの世界大戦と無数の地域紛争や内戦で犠牲になった死者の数はどの世紀よりも多かった。旧日本軍「慰安婦」制度による女性に対する暴力、人権侵害はもちろん、世界各地で今も起こり続ける武力紛争下で、女性たちは性暴力の被害に曝されている。これまで、世界のフェミニストたちは、こうした戦時性暴力が日常の女性に対する暴力の延長であることを明らかにしてきた。家庭内暴力、セクシュアル・ハラスメント、あらゆる場にはびこるセクシズムなど、女性を性的対象として弄んでもいいとする発想が、戦場での武器として女性に性的攻撃を加える手法につながっている。安倍首相は「国民にていねいに説明する」として、国会で集団的自衛権の行使を民家の火事に例えるなどしてきたが、このような戦争の本質を、「民家の火事」レベルにすり替えることが「ていねいな説明」とは思えない。
日本は、未だに過去の侵略戦争に対する加害責任を果たしているとはいえない。それどころか、近年、侵略戦争の事実、戦時性暴力被害者の存在を否定する歴史修正主義的な勢力が勢いを増し、国際社会からもあきれられる事態に陥っている。新基地建設に反対する沖縄の民意も無視し続ける日本政府は、かつての戦争の意味と責任を直視することから始める必要がある。
最後に、1995年、北京で開催された第4回世界女性会議で策定された「北京行動綱領」には「女性の地位向上のためには、世界の平和を維持し、普遍的人権と民主主義、紛争の平和的解決が前提条件である」と明記されていることの重要性を指摘したい。「女性差別撤廃条約」を批准している日本政府は、このような平和の維持を求めた「北京行動綱領」を実現していく責務がある。安全保障関連法案は、国連とともに世界の女性たちが求めてきた「平等・開発・平和」の三大テーマと、その結晶ともいえる「女性差別撤廃条約」、その精神に基づき進めてきた女性の人権確立の運動とは真っ向から対立するものだ。安保法案で唱えられている「平和」と「安全」は、私たちにとっての平和と安全ではない。
特定非営利活動法人アジア女性資料センターは、政府に対し、再び世界の平和と安全を脅かす可能性を持つ安全保障関連法案を即時廃案にすることを求める。