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環境活動家の殺害 2015年に過去最悪

2016/06/29

 イギリスを拠点とする監視機構「グローバル・ウィットネス」は、2015年に殺害された環境活動家は少なくとも185人に上ると発表した。これは前年より60%も多く、過去最悪の数字となっている。
 環境活動家への攻撃が報告されている国は16か国、なかでも最悪の状況を示すのがブラジルで、2015年に50人が殺害されている。殺害された活動家の多くは、アマゾン流域の違法伐採に反対するキャンペーンに関わっていたという。
 ほかの地域で殺害された活動家の数は、フィリピンが33人、コロンビアが26人、ペルーが12人などとなっている。
 グローバル・ウィットネスのビリー・カイトさんは「鉱物資源や木材、パーム油の需要に伴い、各国政府や企業さらには違法採取を行う集団が現地住民に強引な立ち退きを迫っている。そして、それに抗う住民を対象に企業や自警団、国家警察、営利企業らが、殺し屋を雇っていると思われる。報告されているもの以外にも多くの事件が起きている。政府は急増する暴力に対し、緊急に介入すべきだ」と話す。
 2015年、鉱物資源採掘反対活動や農薬、水力発電、木材の伐採に反対する活動の関係者ら42人が殺された。殺害事件の多くは熱帯雨林の奥地で起きており、報告されない事件も含めると実際に殺害された数はずっと多いと予測される。
 ブラジルでは、マホガニーや黒檀、チークなどの木材を違法伐採している何千ものグループがおり、製材会社や地元当局も買収されている。ブラジルで伐採される木材の80%、グローバル市場に出回る木材の25%は違法伐採によるものと推計され、それらの多くはイギリス、アメリカ、ヨーロッパ諸国や中国で流通し、世界最大規模の森林資源の喪失の原因という。さらに2010年~15年の間に200人以上の環境活動家が殺害されている。
 こうした活動家殺害の背景には、現地住民の土地に関する権利の侵害の問題がある。天然資源を狙う者は、現地住民をターゲットにし、彼らの生活を危機にさらしている。2015年の被害者の4割は現地住民だった。
 フィリピンにも同様の問題がある。マイケル・カンポスさんは、フィリピン南部のルマドの住民で、父親も環境問題に取り組む著名な活動家だった。しかし、その父親は祖父とともに村民の前で銃殺されたという。ルマドは、石炭資源やニッケル、金などがとれる地域で、環境活動家の命が狙われる最も危険な場所の1つといわれている。2015年、この地域では25人が殺害された。「殺害したのはだれかわかっている。彼らは今も公然と村を歩きまわっている。政府は何もしてくれない」とカンポスさんはいう。父親の事件の後、ルマド村の住民約3000人が村を離れた。カンポスさんは「採掘企業は民兵を雇い、立ち向かう者に対する脅し、中傷、殺人を行っている」と話す。
 グローバル・ウィットネスは報告書で、環境活動家を守る政府の取り組み強化し、現地に住む人の土地所有権を認めるべきだと主張している。

【報道】
●グローバル・ウィットネス(6/20)”On Dangerous Ground” ●ガーディアン(6/20)”Environmental activist murders set record as 2015 became deadliest year”

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