日本で生まれ育ったウティナンさん 「退去命令」の取り消しを二審も棄却
2016/12/13山梨県に住むウォン・ウティナンさん(16歳)が入国管理局による退去強制処分の取り消しを求めた裁判の控訴審判決で、2016年12月6日、東京高裁の小林昭彦裁判長は、原告側の請求を棄却する判決を言い渡した。
ウティナンさんは2000年、山梨県甲府に生まれた。これまで日本を出たことはなく、タイ語の読み書きはできない。母親はタイ国籍女性で超過滞在者であったことなど、さまざまな事情により小学校に行くことがままならず、不安定な生活を余儀なくされていた。11歳になる少し前に、甲府市の在日外国人支援団体「山梨外国人人権ネットワーク・オアシス」に出会い、団体の提供する学習支援などを受けるようになった。支援団体や地元の教育委員会の支援で中学校に入学したのちは友達にも恵まれた。
2013年夏、ウティナンさんは母親とともに東京入国管理局に出向き、正式に「在留特別許可」を申請した。しかし申請は認められず、14年に退去強制処分が言い渡された。母親とともに提訴し、在留特別許可を訴えたが、東京地裁は2016年6月に訴えを棄却した。
2016年6月の判決では、母親の超過滞在については悪質だとして請求を棄却する一方、ウティナンさんについては国内生活にも順応しており、支援態勢が築かれれば在留特別許可が再検討される余地があるとの付言がされていた。そのため母親は控訴せずに帰国し、ウティナンさんのみが控訴をすることとなった。しかし高裁では一審の付言に触れられることはなかった。
控訴審で、東京高裁の小林昭彦裁判長は「在留特別許可を与えなかった判断は、社会通念上著しく妥当性が欠くといえず、裁量権の逸脱にあたらない」などとした。
判決後、ウティナンさんは、「今後のことは今この状況では考えられない。甲府に戻って気持ちを落ち着かせて考えたい。日本にいたい。とても悔しい」と話している。弁護側は、最高裁まで争うかどうかについても、支援者と交えて話し合い、ウティナンさんの意向を確かめて決めていきたいと話している。
現在、「カチカジャいばらき」の呼びかけで、ウティナンさんへ特別在留許可を訴えるネット署名「タイ国籍の少年、ウォン・ウティナンさんに特別在留許可を!」が始まっている。