特別掲載:リレーエッセイ「被災地で生きる女たち」(2015年9月)
2016/03/11『女たちの21世紀』のリレーエッセイ「被災地で生きる女たち」は、被災地で暮らす女性や、原発事故で生活に大きな変更を余儀なくされた方の思いを届けるため、2013年9月からはじまりました。震災から5年の今日、執筆者の承諾を得て掲載します。(2016年3月11日 『女たちの21世紀』編集部)
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『女たちの21世紀』83号、2015年9月掲載
リレーエッセイ 被災地で生きる女たち 9
石本めぐみ(宮城県登米市/特定非営利活動法人ウィメンズアイ代表理事)
国際地域女性アカデミー in TOHOKU
女性支援の活動をスタートしたのは2011年5月。災害ボランティアとして避難所や自宅避難者への物資支援をしていた時でした。わたしたちが訪問したいくつもの避難所で女性たちが声をあげられないでいました。みんな我慢しているのに自分だけ必要なものや何に困っているのか言えない、と多くの女性たちから聞きました。避難所から仮設住宅への引っ越しが終わる9月から、女性たちが集まりやすく安心して話せる場づくりのため、編み物講座を始めました。被災地のフェーズが変わるごとに講座も少しずつ形を変え、地元講師も増えていきました。楽しい講座からスキルアップや課題解決型まで、わたしたちが「テーマ型コミュニティ」と呼ぶ、編み物、料理、体操、パン、刺しゅう等の講座は、11年9月から15年5月までに429回、参加者のべ4366人。シングルマザーの会、女性視点で町の復興と未来を考える「まなびの女子会」など、地元の女性たちが感じる生き難さを少しでも変えていく活動へと踏み出していきました。そして、根っこの深い問題に本気で取り組むには、女性たちが自ら声をあげ社会を変えていく力と意識を備えることが必要だと、講座で出会った女性たちの声が教えてくれました。
14年9月、JWLI(日本の女性リーダー育成研修)プログラムでボストン滞在中、ホワイロウ・コミッション(途上国の女性グループ・エンパワーメントをする国際NGO)を訪ねてNYへ向かいました。そこで、半年後に仙台で開催される国連防災世界会議に参加する海外の女性リーダーたちが被災地沿岸部を訪れ、地元女性たちと交流し、被災地の教訓を地元の人が直接伝える機会をつくることを提案しました。結論は、これまで国連等の国際会議に併せて開催されてきたグラスルーツ・アカデミーの開催を打診されました。初めて会った3人で3時間近く話すなかで特に白熱したのは、女性のリーダーシップのあり方、復興プロセスのなかで、いかに地域を巻き込んだ女性のエンパワーメントを盛り込むかなどでした。
15年3月10日、宮城、岩手、福島で復興や地域づくりのために活動するNPOスタッフ、仮設支援員、子ども支援、小学校教員、助産師、弁護士などの才能豊かな若い女性たち40人と海外10か国から15人が集まり、日本で初めての「国際地域女性アカデミーin Tohoku」を南三陸町で2日間開催しました。被災地の現場で活躍している若手の女性たちが一同に介するのは初めてだと知り、わたしたちも驚きました。東北の次世代女性リーダーのネットワークの土台をつくり、東北の若い世代と世界の経験豊かな女性が互いの経験から学び合い、国連防災世界会議で発言機会を持つ途上国の女性たちが被災地の人たちから直接学ぶという目的はほぼ達成できました。改めて今後取り組まねばと思ったことの一つは、次世代女性リーダーの育成と機会提供が重要であることを、家族、職場、地域社会の理解と協力を得るために工夫してアピールすることの大切さでした。