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【北京報告】⑥政治宣言採択、日本政府ブリーフィング

2005/03/06

北京+10報告

3月4日 政治宣言採択、日本政府ブリーフィング

アメリカがようやく正式に修正要求を取り下げ、政治宣言は原案
のまま5時過ぎに採択された。前日のNYタイムズによる修正取り下
げの報道を、アメリカ政府は朝まで否定していたが、支持を得られ
る見込みはなくとも、国内向けにはとにかく最後まで注文をつける
姿勢は見せたということか。

議長が採択を告げると会場は拍手に包まれたが、その後もアメリ
カ政府は「女性の権利の進展にはまったく賛成だが、中絶を人権と
して促進しようとすることはみとめられない」との演説を繰り返
し、NGO席では、保守派グループの拍手とフェミニストグループの
ブーイングとが同時に聞かれた。続けて発言した国々の代表は、い
ずれも宣言が北京行動綱領を再確認する内容で採択されたことを祝
し、現実とのギャップを埋めるためいっそうの努力を行っていくと
決意表明した。投票など最悪の事態はまぬがれてほっとはしたけれ
ど、とくに何かを獲得したわけでもない。アメリカに振りまわされ
た感じの1週間だった。

夜6時過ぎからは日本政府代表団による初のブリーフィング。目
黒依子さん、内閣府、外務省、NGOとして政府代表団に入っている
江尻美穂子さん、山下泰子さん、房野桂さんも出席。何を教えても
らえるのかと思ったら、この一週間ですでに起きたことの報告だっ
た。もっと早い時期にセッティングしてもらえないのかと聞いた
ら、事務作業があるので時期は増やせないとの回答。報告も大事だ
とは言うが、こちらとしては動くための情報がほしいのだ。

非常に評判の悪い西銘氏の演説については、「ワーキング・ウィ
メン・ネットワーク」が「進展もあったが間接差別などまだできて
いないこともたくさんある。成果だけを発表するのはおかしいので
はないか」とたずねたが、「政府演説とはそういうもの」という回
答だった。また、「再確認」という言葉を使わなかったことについ
ては、「私たちの考え方としては、『再確認』というと、何か10年
前に戻るような感じもする。日本はいちど決めたことはきちんとや
る。『さらなる進展』(英語では「further implement」)と言っ
たのは、『再確認』はとうぜんの前提ということ」と説明された。

役人の基準による国内向け説明としては上出来なのかもしれない
が、聞かされた側としては、バカにしているのかと言いたくなる。
まさに「再確認」こそが問題になっていたときに、最大のドナー国
である日本政府の高官がはっきりと「再確認」の立場を表明するこ
とこそ重要だったのに、そんな説明で誰を納得させるつもりなの
か。こうしているときにも国内では政府のトップが北京行動綱領の
原則を否定する発言をくりかえしているというのに。今回、日本政
府は熱心に「女性の地位向上に対する日本政府の貢献」を宣伝して
いるが、いくら金を出したところで感謝や信頼が買えるわけではな
いと、いいかげん気がついてほしい。私たち納税者の金をドブに捨
てている現場を見てしまった気分。

もっとも、このNGOブリーフィングをきっかけに、来週からは少
し風通しがよくなる可能性も出てきた。北京会議やカイロ会議のと
きは政府側からも毎日積極的に情報を流し交流の機会もあったの
に、今回は、政府代表団にNGOが3人も入っているにもかかわらず、
まったくコミュニケーションのチャンネルが閉ざされていることに
対して、何人もが率直に不満を口に出し、一方、政府側に入ってい
る人たちも積極的にこたえようとしてくれた。その結果、来週から
は、毎日決まった時間に政府代表団内のNGO代表と会うことが可能
になりそうだ。

もちろん、基本的にNGOが意思決定プロセスにかかわるチャンネ
ルがないことは変わらず、これから議論の始まる決議案について
も、日本政府代表団は内容をNGOに伏せたまま、本国政府の指示を
受けて立場を表明することになる。これまでの国連会議の経験を
もっとNGOの間でシェアしながら、政府をどのように動かしていく
か、戦略を議論することを始めていこうと思った。このフラストレ
ーションのたまる経験もそのための材料になるだろう。

本山央子

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