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アイスランド:男女間賃金格差是正のための「賃金平等法」施行

2018/01/09

2018年1月1日、アイスランドで「賃金平等法」が施行された。25人以上の従業員を雇用している企業や公的機関に対して、同一価値の労働には同額の賃金を支払うことを義務化する法律だ。今後、企業や公的機関は、給与規定に問題はないか、同一価値に基づいた平等な等級制度であるか等を「同一賃金基準」に基づき審査され、政府発行の証明書を取得する必要がある。「同一賃金基準」は労働組合、経営者連盟、労働財務省との共同作業で発案された。このような法律が成立したのは男女格差ランキングで格差が最も少ない第1位にランクするアイスランドが世界初となる。

トルステン・ビグルンドソン(Thorsteinn Viglundsson)社会福祉・平等担当大臣は「現在、年次財務諸表の提出がない場合、一日ごとに罰金が科せられているが、今回も定められた時期に認証を受けなければ、罰金を科すことになるだろう」と述べている。

アイスランドの女性たちは、1975年以来、社会にとって女性たちがどれほど重要であるのかを知らせるため、一斉に仕事を休むアクション「Kvennafri」を実行してきた歴史を持つ。

2016年のアイスランド大統領選挙に立候補したハラ・トマスドッティール(Halla Tomasdottir)さんは、経済誌『Forbes』のインタビューで「賃金平等法の成立は、男女平等が達成されることを祝うだけでなく、ビジネスにとっても重要である」と強調している。トマスドッティールさんは、さらに「リーダーとして企業の競争力を維持したいなら、平等な賃金は企業にとっての優先課題と考えるべきだ」とも語った。

アイスランドの同法成立から5日後の2018年1月6日には、ドイツで男女間の賃金格差の公表を義務付ける新たな法律”Entgelttransparenzgesetz”が全面施行された。この法律は、女性労働者が同様の仕事をしている男性労働者の給与額の公表を求めた場合、雇用者はそれに応じなければならないというもの。しかし、200人以上の従業員を雇用している会社であり、同僚男性6人以上が同様の仕事をしている場合にのみ適用される。また同法は、同僚男性の給料を通知するだけで、平等な賃金の保障を意味するものではない。ドイツの雑誌『Der Spiegel』のコラムは同法について、法律要件のハードルが高いうえに、男女間賃金格差の是正につながることは期待できないことから「女性の冷笑法」とニックネームを付けた。ドイツの家庭省でさえ「この法律は給与のジェンダー格差を均等化し、差別をなくすために必要なさまざまな措置のほんの1つにすぎない」と指摘している。

厚生労働省の調査(2016年)によると、日本でフルタイムで働く女性の平均賃金は月額24万4600円で、男性の賃金の73%となっている。日本の男女間賃金格差はOECD加盟34か国のなかで、ワースト2位という深刻な状況だが、格差是正を強力に推し進めるような具体的な法整備は未だにない。

【参考】
Act on Equal Status and Equal Rights of Women and Men(Ministry of Welfare)
New Icelandic law on Equal Pay Certification entered into force on January 1, 2018(Ministry of Welfare)

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