女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求める緊急院内集会開催
2018/06/142018年6月12日、衆議院第一議員会館にて、JNNC(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク)主催の緊急院内集会「今こそ、女性差別撤廃条約選択議定書の批准を!」が行われた。
1979年に国連総会で採択された「女性差別撤廃条約」は、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃を目的とした国際条約だ。日本は1985年に批准しており、現在、締約国は189か国となっている。
1999年、条約の実施措置として「個人通報制度」と「調査制度」が設けられた選択議定書が国連総会にて新たに採択された。この選択議定書はすでに189か国中109か国が批准しているが、日本は未批准のままだ。女性差別撤廃委員会(CEDAW)からも批准するよう繰り返し要請されている。
JNNC共同代表の柚木康子さんは集会の冒頭で「2007年のジェンダー格差ランキングを振り返ると日本は80位で、フランスは76位だった。それから10年後の昨年、日本はなんと114位となり、フランスは11位になった。政治家たちの方針が、このような実態を招いているのではないだろうか。この間、財務省次官によるセクシュアル・ハラスメントと麻生財務大臣らによる被害者バッシングがあった。こうした問題を恥としない人たちが政治のトップにいるということだ。国際労働機関(ILO)では、仕事の世界における暴力・ハラスメントに関する基準づくりがはじまっている。今こそ、この日本がジェンダーに基づく差別をなくしていくという姿勢を示すために女性差別撤廃条約選択議定書の批准が必要だ」と挨拶した。
国連女性の地位委員会の矢澤澄子さんからは、選択議定書批准をめぐるこれまでの動きが共有された。議定書の「個人通報制度」は条約で保障される権利を侵害された個人が委員会に申し立て(通報)できる手続きで、矢澤さんは「この通報制度はとくに重要だ」と強調した。通報は国内救済手続きを尽くした後、つまり日本では最高裁でも解決しなかった場合に可能となる。CEDAWによる2009年の審査で外務省は、1999年から外務省と法務省で同選択議定書について40回ほど研究会を重ねており、導入の可否について真剣かつ慎重に検討を進めていると答弁した。しかし、それから10年近くが経っている。これまで批准について問題ないという立場を示してきた最高裁判所長官や法務大臣らもおり、あとは国会の承認があればよいだけだ。
集会では「選択議定書の個人通報制度が実現したら」として、これまで最高裁でも救済されなかった男女賃金差別事件やセクハラ事件が紹介された。また、Mネットの坂本洋子さんは、CEDAWから繰り返し求められている民法改正について「再婚禁止期間は100日に短縮され、婚外子相続については婚内子と同じになった。また、婚姻最低年齢は今国会で男女ともに18歳になる。しかし、CEDAWの一番の対象になっているのは選択的夫婦別姓だ。選択的夫婦別姓は男女平等の試金石であり、本当に人権が実現できる社会なのか、多様な生き方ができる社会なのかどうかが問われていると思う。これができないのは非常に生きにくい社会だということだ」と述べ、2018年2月の政府による世論調査結果では、賛成(42.5%)が反対(29.3%)を大きく上回っていることも強調した。
この日、JNNCは選択議定書のすみやかな批准を求める請願を衆参両院議長宛に提出。2018年10月にはCEDAW個人通報作業部会長のパトリシア・シュルツさんをスイスから招いて集会を開催する予定であることも共有された。
最後にJNNC共同代表の石崎節子さんは「女性差別撤廃条約選択議定書の批准のためにさまざまな形で世論喚起をしていきたい」とし、批准に向けて議員そして市民の協力を呼び掛けた。