連続セミナー ケアのグローバル化とジェンダー
2007/04/16連続セミナー ケアのグローバル化とジェンダー
「世界中から、より安いサービスを」でいいのか?
看護士・介護士の受け入れをめぐる日比交渉は、日本がすでに、ケア労働の市場化とグローバル化の波に深くまきこまれていることを示している。これまで主に世帯内の女性の無償労働によって担われてきたケア労働の「社会化」は、なぜ、ジェンダー平等、人間らしい働き方、普遍的で豊かなケアを実現するのに失敗してきたのだろうか?低賃金・不安定・細切れ労働が常態化しているケア部門が、いっそうの分断と階層化ではなく、すべてのひとに尊厳ある生を保障する基盤となるために、私たちは「ケア」の概念をどう把握し、どのようなシステムを構想すべきだろうか?グローバルな変動を視野に入れつつ、フェミニスト議論と関連制度を学び、社会運動間の連帯を深め、未来へのよりよい選択を探るための連続セミナーです。
第1回「フィリピンからの看護師・介護士受け入れが問いかける問題とは?」
講師 小ヶ谷千穂さん(横浜国立大学教育人間科学部)
4月16日(月)19:00~21:00
場所 東京ウィメンズプラザ 第2会議室A
参加費 1000円(アジア女性資料センター会員は700円)
これまでのフィリピンの海外雇用政策の文脈の中で、日本へのケアギバーの送り出しをどう考えればよいのか。他の東アジア諸国の状況とも照らして、日本の市民にとっての課題を確認します。
第2回 5月15日(火)
講師 小幡詩子さん(アジア女性資料センター会員)
「医療・介護現場の階層化と外国人ケアワーカー」
場所 アジア女性資料センター
参加費 1000円(アジア女性資料センター会員は700円)
ワーキングプア、非正規雇用、派遣労働、偽装請負といった問題が取り沙汰されている昨今ですが、これは今に始まったことではなく、介護福祉現場では以前からありました。男性の非正規のみならず正規雇用者にまで影響を及ぼすことになって、初めて社会的に注目されたのです。病院付添などは「派遣労働形態」をとってきたのに対し、2000年介護保険制度下の在宅介護は「請負労働形態」をとるようになりました。しかも偽装請負にも拘わらず、見えなかっただけなのです。
人の生命・生活は、派遣であれ請負であれ到底守り切れないところに根本的問題があります。今回のセミナーでは、そもそも介護という語が、行政に都合良く作り出された行政用語であることを認識し、その背後にある構造的問題―医療・看護・介護分野の階層/分断化―を歴史的展開を追いながら注目して、その底辺にこれまで日系人や外国人女性がいかに組み込まれ、どんな問題に直面してきたの
か明らかにしたいと思います。
第3回 6月8日(金)
講師 井口 泰さん(関西学院大学)
「日比ケア労働者受け入れ協定と市民の課題」
場所 東京ウィメンズプラザ
参加費 1000円(アジア女性資料センター会員は700円)
外国人労働者政策を研究されてこられた井口泰さんは、「移住連」でも積極的に発言しておられます。ケアワーカー受け入れに関する日比協定の問題点をお聞きし、外国人労働者の権利を守るために、今後の私たち市民の課題を考えます。
第4回 「問題は『労働力不足』なのか?」
講師 清沢聖子さん(東京介護福祉労働組合 書記長)
日時:7月4日(水)19:00~21:00
場所:アジア女性資料センター
参加費:1000円(AJWRC会員は700円)
日本の介護労働者不足を解消するためには、海外からの労働者受け入れが急務といわれています。もっとも深刻な問題とは、ほんとうに「労働力不足」なのでしょうか。介護労働者の組織化にとりくんでいる清沢さんに、現場から見える問題やとりくみを話していただきます。ディスカッションの時間もたくさんとりたいと思います。
第5回
「介護保険制度はどこへ向かっているのか」
講師 服部万里子さん(服部メディカル研究所所長、立教大学教授)
8月6日(水)19:00~20:45
場所 東京ウィメンズプラザ
利用者負担が増える一方の介護保険制度。制度のどこが問題なのか、改正で何が変わったのか、今後向かう方向は? 人気ブログ「ケアタイムズ」や介護NPOで活発に活動されている服部万里子さんをお迎えして、公正なケアサービス提供の原則としくみについて考えます。
第6回 9月3日(月)18:30~19:45
講師 中野麻美さん(弁護士)
「介護事業に進出する人材派遣ビジネス」
場所 東京ウィメンズプラザ
人材派遣大手グッドウィルグループ傘下のコムスンによる不正発覚は、介護保険制度の欠陥を露わにしました。人材派遣ビジネスは介護分野にどのように進出してきたのか、そのことが社会サービスとしての福祉にもつ意味は。派遣労働に長年取り組んできた中野麻美さんと考えます。
第7回 「ホ-ムヘルパ-の抱えるジェンダ-課題」
講師 杉本貴代栄さん(金城学院大学教授)
日時:11月17日(土)14:00~16:30
場所:アジア女性資料センター
参加費:1000円(アジア女性資料センター会員は700円)
「介護の社会化」をスローガンに成立したはずの介護保険制度。しかし、現場の介護労働の担い手の多くは依然として女性が占めており、ジェンダー特有の課題は形を変えて存在しています。シングルマザーの日米比較など、社会福祉をフェミニズムの視点から研究しておられる杉本貴代栄さんに、最近の研究成果をうかがいながら、介護労働をジェンダー視点で考えます。
第8回「介護の質を問う」いや「介護労働の質を問う」
講師 高橋道子さん(介護福祉士)
場所:アジア女性資料センター
日時:12月14日(金)19:00~
参加費:1000円(アジア女性資料センター会員は700円)
介護保険の導入時によく聞かれた言葉が「市場競争は介護の質を高める」でした。でも「介護の質」とは何? 「社会の嫁」として扱われてきたヘルパーの現実から、介護の寸断化を克服する道を、NPOとして地域に根ざした介護を追求してきた高橋さんと考えます。