東京オリンピック・パラリンピックにおける ジェンダーにもとづく暴力・ハラスメント対策に関する質問状を提出しました
2021/08/16アジア女性資料センターでは、東京オリンピック開会直前の7月16日に起こった性暴力事件および、会期中の強制わいせつ事件やSNS上での性的指向や性自認をめぐるハラスメントなどを受け、東京オリンピック・パラリンピック関係組織に対して、「ジェンダーに基づく暴力・ハラスメント対策に関する質問状」を21団体の連名で提出しました。各関係委員会には、9月5日までに書面にて回答を求めています。
2021年8月16日
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
事務総長 武藤敏郎様
公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)
会長 山下泰裕様
日本パラリンピック委員会
会長 鳥原光憲様
東京オリンピック・パラリンピックにおける
ジェンダーにもとづく暴力・ハラスメント対策に関する質問状
東京オリンピック開会直前の7月16日、閉会式リハーサル後に国立競技場内において、アルバイトスタッフの女性が同じくアルバイトスタッフの男性により性暴力被害を受ける事件が発生したと報じられました(検察は後に不起訴判断)[1]。会期中の8月6日には外国選手が北海道の滞在先ホテル従業員に対する強制わいせつで書類送検されたほか[2]、SNS上で選手の性的指向や性自認をめぐるハラスメントも発生しています[3]。
過去のオリンピック・パラリンピック大会においても、性暴力を含む暴力やハラスメントなどの人権侵害が発生しています。特に2016年のリオデジャネイロ夏季大会において、著名な選手が関わる重大な性暴力事件が報告されたことから、IOCではinternational safeguarding officerの選手村内配置、選手や指導者向けの教育・意識啓発など、ハラスメントと暴力に関する対策をとるとしています。また2018年平昌・冬季オリンピックでは開催都市と協力して、性暴力リソース/カウンセリングセンターが初めて4か所に設置されました[4]。
こうした経緯と方針を踏まえ、JOCは選手・指導者向け通報窓口を設置したほか、暴力・ハラスメント防止対策についてIOCと協議を実施したと述べています[5]。しかし、選手・指導者以外の大会開催に関わる多くの人びとに対する暴力・ハラスメントについてはどのような防止策がとられていたのかは明らかでなく、JOCおよび組織委員会のホームページ上には、誰もが容易にアクセスできるかたちでの包括的な対策・ガイドラインや通報相談先などの情報が示されていません。また、実際に起きた性暴力事件やハラスメントについても、組織委による声明や具体的対応策は示されていません。
オリンピック大会は8月8日に閉幕しましたが、パラリンピック大会がこの後に控えていること、特に性暴力の被害を報告することにはしばしば時間がかかること、また派遣労働者やボランティアが多く動員されたことを考慮すると、今からでも明確な指針および情報が示されるべきと考えます。そこで具体的に以下の項目について質問します。
- 2020東京オリンピック・パラリンピック大会における暴力・ハラスメント防止に関する包括的なガイドラインは作成されているのか。作成されたものはどの範囲の関係者にどのように周知しているのか。
- 選手・指導者向け通報相談窓口は具体的にどのように周知されたのか。運用結果について今後公表の予定はあるか。
- 2018年平昌大会において開設されたような性暴力カウンセリングセンターに類するようなセンターは東京大会では設置されたか。されなかったとしたらその理由は何か。
- 実際に発生した性暴力被害やハラスメントについて、組織委あるいはJOCは開催団体としてどのような対応をとったか。組織委員会に設置されたジェンダー平等推進チームではなんらかの検討を行っているか。
- IOCおよびJOCによる予防措置は「選手の安全と福祉」に焦点を当てたものになっているが、報道関係者や派遣労働者、ボランティアなど、選手や指導者以外の大会開催に関わった人々に対する人権侵害防止に関する包括的な方針や対策はあるか。あるとすればどのように周知されたか。これらの人びとが被害者または加害者となった場合の対応はどの組織が責任を負うのか。
- 組織委員会は大会後解散することになるが、今後、東京大会に関わる人権侵害が明らかになった場合に組織者として法的責任を負う主体はどこになるのか。
以上についての回答を、9月5日までに下記連絡先までメールおよび書面にてお送りくださるよう求めます。
注[1] 「国立競技場で強制性交容疑 大会アルバイトを逮捕 警視庁」(2021年7月19日 朝日新聞)
注[2] 「五輪エジプト代表を書類送検 滞在ホテルでわいせつ疑い―北海道警」(2021年08月06日時事通信)
注[3] 東京プライドハウス「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に参加するアスリートの 性的指向・性自認に関するアウティングについての緊急声明」
注[4] “In age of #metoo, Winter Olympics in South Korea opens centers to address sexual assault” (ABC news 2018/2/12)
注[5] 「選手、指導者らを対象とした通報相談窓口を開設」(JOC, 2013.03.19);「スポーツにおけるハラスメントと暴力根絶に向けてIOCとJOCは協議を実施」(JOC, 2020.08.0)
【提出団体】
NPO法人アジア女性資料センター
I(アイ)女性会議
DV防止サポートネット・ちば
アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(WAM)
一票で変える女たちの会
NPO法人ウイメンズネット・函館
オリンピックの中止を求める松本の会
強姦救援センター・沖縄(REICO)
信仰とセクシュアリティを考えるキリスト者の会(ECQA)
NPO法人・女性と子どものスペース・ニコ
認定NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ
女性ネットSaya-Saya
性暴力禁止法をつくろうネットワーク
ふぇみ・ゼミ
ふぇみん婦人民主クラブ
フツーのLGBTをクィアする
北京JAC(世界女性会議ロビイングネットワーク)
れ組スタジオ・東京
NPO法人山口女性サポートネットワーク
やまなし地域女性史「聞き書き」プロジェクト
私たちが止めるしかない 東京オリパラ:女性たちの抗議リレー
以上 21団体
【返信・連絡先】
NPO法人アジア女性資料センター
E-mail:ajwrc@ajwrc.org
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町14-10-211Tel:03-3780-5245 Fax:03-3463-9752
質問状はこちらよりダウンロードできます。
▷オリンピックに反対するフェミニストキャンペーンページへ/Feminist campaign against Olympic games