国連人権理事会日本審査:死刑、「慰安婦」問題など指摘
2008/05/12国連人権理事会日本審査:死刑、「慰安婦」問題など指摘
ジュネーブで開催されている国連人権理事会で9日、日本に対する初の普遍的定期審査(UPR)が行われ、死刑の存続や代用監獄、「慰安婦」問題、女性やマイノリティに対する差別などの人権問題が指摘を受けました。今年から運用が始まったUPRは、国連加盟国が互いに人権状況を評価しあう制度で、政府によるロビーイングの影響を受けやすい一方、NGOが関与することが難しいという問題点も明らかになってきたようです。今回の審査報告は14日の本会議で採択されます。
◆プレスリリース◆
国連人権理事会・日本の普遍的定期審査における「慰安婦」問題の議論について
2008年5月9日
2008年5月5日から19日まで、ジュネーブ国連本部で各国の人権状況を審査する人権理事会・普遍的定期審査の第2回期作業部会が開かれ、日本も初めてその審査対象国となりました。審査は現地時間5月9日の午後2時半から5時半に開かれ、43ヶ国が日本の人権状況に関して質問・コメントをしました。*
*参考:理事国は3分、オブザーバーは2分の質問時間がある。韓国は30数カ国、パキスタンは68カ国だった。
作業部会に先立ち、審査のための準備文書は3種類用意されていました。日本政府の報告書1本と、国連人権高等弁務官事務所が用意した2本の報告書です。
2008年3月に日本政府が提出した報告書には「慰安婦」問題に関する言及は一言もありませんでしたが、一方、国連人権高等弁務官事務所が用意した条約機関・特別手続きによる報告書(Compilation)、NGOを含む関係者からの情報をまとめたもの(Summary)には、それぞれ2パラグラフ、計4パラグラフの言及がありました。特にフォローアップすべき主要な勧告として両文書に言及されていたことは特筆に価します。しかし、普遍的定期審査の作業部会で採択される文書は基本的に作業部会の議事録に近いものであり、この3時間の審査のなかで各国政府が発言しないかぎり、上記の高等弁務官事務所の報告書の内容は、作業部会の採択文書に反映されることはないことがわかりました。
そこで「慰安婦」問題に取り組む韓国・挺身隊問題対策協議会、オランダ・対日道義財団、日本・アジア女性資料センターは、各国政府が「慰安婦」問題を取り上げ、日本政府が国際社会の勧告に応えるようロビイングを展開しました。その結果、以下の各国が「慰安婦」問題に関して言及しました。
*Philippines*
We appreciate the efforts made by the Japanese government to combat trafficking in women, and hope that the government shall even
further*enhance programs aimed at redress, and protection of human
rights of victims of trafficking past and present.* What measures has the government put in place to address the demand factor in cases of trafficking of human beings?
*Democratic People’s Republic of Korea*
*We recommend Japan to take concrete measures to address, once and for all, the Japanese Military Sexual Slavery and other violations committed in the past in other countries including Korea.*
*勧告部分のみの抜粋
*China**
As Special Rapportour and Committee against Torture noticed, there are some historical issues.
* *
*France**
In the issue of Comfort women, in the light of many recommendation made by international community, France *encourage long lasting solution to the forced prostitution during World War 2.*
*The Netherland*
My delegation appreciate to be informed how Japan will respond to the recommendations made by international community and various human rights mechanisms with regard to the Japan’s military sexual slavery practices during Second World War, also known as the practice of “comfort women”.
*Republic of Korea*
The UN human rights mechanisms including the Special Rapporteur on violence against women, the Committee on the Elimination of Discrimination against women(CEDAW) and the committee against Torture(CAT) have expressed their concerns over the issue of comfort women during the Second World War. They consider that this matter has not been adequately addressed by the Japanese government, and have accordingly made recommendations to Japan on this matter.
*We call on the Japanese government to respond sincerely to the recommendations of the UN human rights mechanisms, *and request the Japanese delegation to elaborate on the current status of implementation on the recommendations as well as their plans for future actions in this regard.
*unedited version.
これらの質問に対する日本政府の発言は基本的には今までどおり、河野談話で日本軍の関与を認めたこと、サンフランシスコ平和条約および二国間条約で解決済みであること、アジア女性基金に最大限の協力をしてきたことなどを繰り返しており、新たなコメントはほとんどありませんでした。
これらの発言をまとめた作業部会報告案は、5月14日(水)17時半~18時(ジュネーブ時間)に作業部会レベルで採択され、次回人権理事会の6月12日の15時~18時の間に審議・採択される予定です。
「慰安婦」問題に関してはっきり言及した国が4カ国からあったことは、政治的なUPRのプロセスのなかで大きな成果といえるだろう。特に、被害国だけでなく第3国が「慰安婦」問題に言及したことは、この問題が普遍的な女性の人権の問題として、解決すべき課題として認識されていることを示している。
一方、UPR作業部会の審議過程を通じて実感したことは、NGOを含めたステークホルダーが事前に提供した情報がほとんど省みられないことである。普遍的定期審査のプロセス自体が、世界の人権状況を本当に改善していくことになるのか、NGOによる関与とウォッチが必要である。【プレスリリース終わり】
◆報道
死刑の猶予・廃止要請相次ぐ・国連人権理が初の対日審査
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080510AT1G1000J10052008.html
2008/05/10-06:36 従軍慰安婦問題への対処要請=国連人権理の対日審査で-北朝鮮など
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008051000077
◆審査の様子は国連ホームページのウェブキャスト・アーカイブでも見られます。
http://www.un.org/webcast/unhrc/archive.asp
◆関連情報
https://www.ajwrc.org/modules/news/article.php?storyid=406