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『ケアの現場から』vol.1/ 遠くの親戚より近くの仲間~「備えあれば憂いなし」のリスクマネジメント〜

2023/06/16

◆AJWRC会員によるフェミニスト視点のコラムをお届けします(不定期投稿)。

介護福祉士でありライターの白崎朝子さんが綴る『ケアの現場から』。

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『ケアの現場から』vol.1

遠くの親戚より近くの仲間~「備えあれば憂いなし」のリスクマネジメント〜

 

 4月24日、笑いヨガを主催する40年来の友人に呼ばれ、笑いヨガのあとに介護保険の勉強会の講師をした。参加者は一人暮しの50~80代の女性たち。社会保障制度が改悪の一途をたどる時代を、どうサバイブするか…そのリスクマネジメントについても話した。

 闘病しながらシングルマザーで一人息子を育ててきた私は、彼の幼少期にずいぶんとケアしてもらった。彼はいまで言う「ヤングケアラー」。私もまた母のケアをする「ヤングケアラー」だった。そのあたりの経緯は以下にある。
https://sibkoto.org/articles/detail/69

 

 息子が7年前に巣だった私はいま一人暮らし。だが息子は対人支援のエッセンシャル・ワーカーのため、私がコロナに感染しても絶対に助けを呼べない。また3年間、介護現場の取材をするなかで、コロナに感染しても簡単には入院できないことを知っていた。なので災害対策も兼ね、2020年からずっと「備えあれば憂いなし」のローリングストック方式の備蓄を強化している。

 昨秋、コロナに感染したが、備蓄だけでなくパルスオキシメーターも購入していたため、一人で2週間自宅療養し、いざというときの入院セットも用意して、息子にはほとんど負担をかけずに済んだ。

 私自身がこれまで何度も救急搬送された経験があり、さらに25歳からの介護職、ホームレス支援者として、多数の救急搬送をした。そのため救急搬送時の用意、緊急時の連絡網についても詳しく話した。

 「一人暮しの人はいますぐできる安否確認のためのグループLINEをつくりましょう」と勧めた。朝、生きていたらスタンプを一個送れば、仲間に安否を知らせることができる。
 80代の女性はすでにしっかりグループLINEをつくっていた。「さすが!」である。

 そして何より大事なのは、なにかあったときに近隣でSOSを出せる友人や仲間が複数いること。実はこれが一番難しい。血縁にしか頼れない人、頼ってはいけないと思っている人は、血縁と共倒れになる可能性がある。

 血縁との関係を大切にしたかったら、仲間をつくって相互に助け合う仕組みを元気なうちにつくっておこうと呼び掛けた。

 現時点で、要支援の人は、地域差もあるが、保険料を払っても、ホームヘルパーやデイサービスを使えなくなってきている。なので私は、気心の知れた仲間たちとつくる「ばあちゃん食堂」を提案した。

 私を呼んでいただいた日は、4月生まれの誕生会を兼ねた笑いヨガと勉強会。それぞれが持ち寄った10品以上の美味しい野菜料理やお寿司などで乾杯した。

 

  国が介護保険を改悪して、デイサービスを使えなくさせても、近くのコミニュティセンターなどで、みんなでセルフデイサービスをやればいい。また一人での入浴が不安になってきたら、近くの銭湯に行って顔馴染みとなるのもいいかもしれない(家族と同居しても、入浴中の事故は多い)。

  笑いヨガにあつまってきたパワフルな女性たちは、すでにセルフデイサービス的な集まりを実践している。参加者は私を入れて9人。参加した女性たちの気概に私もエンパワメントされた、笑顔と感謝の一日だった。

 

 

 

白崎朝子(介護福祉士・ライター)

 

◆著者紹介

白崎朝子(しらさき・あさこ)   
介護福祉士・ライター。女性解放運動、反核・反原発、母子家庭の当事者運動、ホームレス「支援」に取り組む。介護・福祉現場や旧優生保護法強制不妊手術裁判、福祉現場における構造的暴力や虐待について考察。著書『介護労働を生きる』、編著書『ベーシックインカムとジェンダー』、『passion ケアという「しごと」』(共に現代書館)。2009年、平和・協同ジャーナリスト基金の荒井なみ子賞受賞。   

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