NHK裁判:最高裁、高裁判断を覆す不当判決
2008/06/14 2000年に開催された日本軍性奴隷制を裁く民間法廷「女性国際戦犯法廷」を取材したNHKの特集番組が、2001年、放送直前に安部晋三氏ら政治家の介入によって改変された事件をめぐって、「法廷」主催団体のVAWW-Net JapanがNHKらを訴えている裁判で、最高裁(横尾和子裁判長)は6月12日、「特段の事情」の下にVAWW-Netの期待権を認めた高裁判決を覆し、NHKらの行為の違法性を認めませんでした。一方で政治家による放送への介入・NHK幹部らによる番組改編の事実についてはまったく判断を下しておらず、著しく正当性を欠く判断です。
昨年1月の高裁判決は、「特段の事情」の下に被取材者であるVAWW-Net の「期待権」を認め、NHKらによる説明義務違反を認めましたが、横尾和子裁判長は、VAWW-Netに「格段の負担」が生じたわけではないとしてVAWW-Netの主張を退けたばかりか、「放送された番組が取材対象者の期待・信頼と異なるとして違法の評価を受ける可能性があれば、取材活動の委縮を招くことは避けられず、ひいては報道の自由の制約にもつながる」「(取材対象者の)期待・信頼を保護することは、期待・信頼の内容に沿った番組の制作及び放送を行う作為を求めるものであり、(取材対象者の)放送番組編集への介入を許容する恐れがある」などと述べました。
その一方で、実際にこの事件において放送番組に介入して表現・放送の自由を侵害した安部氏ら政治家の行為や、圧力に屈して放送直前に番組の改変を行ったNHK幹部らの責任については、まったく不問にしています。
政治権力の介入に対して表現の自由を守るべき司法の役割を放棄した不当判決と言わざるを得ません。
VAWW-Net Japan共同代表の西野瑠美子さんは、「私たちの負けではありません。負けたのは最高裁です。最高裁が自ら真実と正義と市民の信頼を手放し、断ち切ったのです」と述べました。