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世界サミット:女性の権利に関する焦点は

2005/09/15

14 日から始まる世界サミットは、国連人権管理システム、ミレニアム開発目標など、女性にとって重要な関心事項が議論されます。「開発」「平和と安全保障」「人権」「国連改革」の4つの分野における、世界の女性たちの関心、懸念、要望を、4つのグローバルな女性団体がまとめました。

2005世界サミット:女性の権利に関する焦点は(仮訳)

Center for Women’s Global Leadership (CWGL),
Development Alternatives with Women for a New Era (DAWN),
United Methodist United Nations Office
Women’s Environment and Development Organization (WEDO)

過去20年、国連は、女性たちが平和、人権、ジェンダー平等と女性のエンパワーメント、貧困撲滅、持続可能な開発といった包括的なグローバルアジェンダを定義する努力を助け、女性たちの力を強めてきた。190以上の政府がこのグローバルアジェンダへのコミットメントを表明したが、国際レベルでも国内でも、約束と実行の間には大きな較差が依然として残されている。

9月14日から16日にかけて、世界各国の政府代表――その大多数は男性だ――が 2005年世界サミットのためにニューヨークの国連本部に集まる。ここで彼らは、平和と安全保障、人権、開発と国連改革をつなぐ一連の提案について合意を探ることになる。ところがアメリカはぎりぎりの瞬間になって、持続可能な開発、貧困国に対する債務救済と資金援助、環境に関する提案を骨抜きにし、さらに過去の国連会議で合意された社会経済問題への支持を弱めようとする大幅な修正案を持ち出してきて、このプロセスを脅かそうとしている。

女性たちはこのプロセスを注視してきた。女性たちにとっては、女性条約(CEDAW:女性差別撤廃条約)や北京行動綱領、カイロ行動計画、その他の1990 年代に広く承認された政府間合意に含まれる、平等、エンパワーメント及び女性の人権についての誓約がかかっている。以下では、それぞれの分野について、世界サミットで議論される問題と、それが世界の女性たちにとって意味することを詳しく述べよう。

A.開発
●ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは目標達成の鍵

多くの政府および国連や世界銀行などの国際機関は、原則的に、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが、2000年のミレニアムサミットで述べられたミレニアム開発目標など、開発分野の目標達成における不可欠の要素であることに合意している。持続可能な開発を作り出すためには、各国政府は今こそ口約束を越えてこの枠組みの下で行動しなければならない。2005世界サミットで女性たちは各国政府に次のことを求める。
· 女性と少女に対する暴力根絶の努力を拡大すること。
· 性および生殖に関わる健康と権利を保障すること。
· 女性と少女の財産、住居、土地、および相続に関わる権利を保障すること。
· 所得格差を含む雇用におけるジェンダー不平等を廃絶すること。
· 国及び地方政府における女性の平等な代表と参加を確保すること。
· 燃料や水など基本的な世帯の必要を満たすための時間など、女性や少女が費やす時間的負担を減らすようなインフラに投資を行うこと。
· 初頭及び中等教育への少女のアクセスを拡大すること。

これらの戦略的優先事項は、過去の国際合意の中で各国政府がすでに承認している優先事項の一部である。これらは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントという重要な目標を達成するために、最低限必要な事項なのだ。

●人権に基づく政策は、グローバル社会の根本的な優先目標

世界サミットは、豊かな国を味方につけた強力な多国籍企業による搾取に、貧しい国々をますますさらされやすくするグローバル経済の構造的な不平等に取り組まなくてはならない。こうした不平等は、地域の事業と雇用の喪失、貧富の格差の拡大を招いている。社会的ニーズにほとんど注意を払わない、成長第一主義の現在の新自由主義を賞賛する各国政府や国際貿易・金融機関の責任が問われなくてはならない。これらの政策は特に女性に重大な影響をおよぼす。有償の雇用と社会保護をますます不安定にし、女性たちを、インフォーマルな、危険であることも多い仕事へと押し出し、不払いのケア責任の負担を重くするのだ。女性たちは世界サミットに集まるリーダーたちに求める。

· 新自由主義経済政策が貧困と不平等を増大させ、人間の安全保障を危うくする人権侵害を促進していることを認めること。
· 開発、安全、人権という相互依存的な目標を達成するために、人権に基づく政策と計画を採用すること。

B. 平和と安全保障

●女性は紛争防止、平和構築イニシアティブの中心である
女性グループは、あらゆる脅威は相互に関連しているという認識に基づく新しい安全保障コンセンサスに関する事務総長の提案を強く支持し、これに対する(各国政府の)集合的な回答を求める。女性グループは、人間の安全保障、紛争予防、そして平和と安全保障に関するあらゆる意思決定プロセスへの女性の平等な参加に、いっそうの注意が払われるように求める。女性たちは各国政府に次のことを求める:

· 女性、平和、安全保障に関する安全保障理事解決議題1325号の速やか、かつ完全な実現の約束
· 紛争下、および紛争後における女性の保護を確保し、ジェンダーに基づく暴力に対するアカウンタビリティと報告メカニズムを確立するための行動をとること。
· 平和及び安全保障に関わるあらゆる意思決定において、また特に、提案されている平和構築委員会における女性の参加を確保すること。

●平和構築委員会

武力紛争から持続的な平和への以降状態にある国々を支援するための国連平和構築委員会の設立提案は、相当数の政府及び女性グループを含む市民社会からの支持を得ている。委員会は、平和構築のために国連システムに必要とされている政策の一貫性とコーディネーションに役立つだろう。しかし委員会が成功し実効性を持つためには、平和構築及び紛争防止に関する市民社会の知識とネットワーク、コミットメントが必要である。委員会は、本部及び各国レベルでフォーマルなメカニズムを通して市民社会と協力することを、マンデートで明確に確約すべきである。委員会のマンデートや構成、報告手続き等の詳細は、加盟国および市民社会、とくに全国レベルや草の根で活動する女性グループとの協議を通して作成されるべきである。
女性たちは、サミットに集まる各国政府に求める:
· 委員会の仕事を紛争後だけに制限するのでなく、紛争に関わる全体の領域を検証するための権限を与えること。
· 委員会が国レベルと本部のレベルで市民社会組織と協働するよう定めること。
· 委員会の仕事のために予測可能で十分な資金を確保すること。

●より民主的で透明な安全保障理事会

この40年で初めて、地域の多様性と代表を確保するための安全保障理事会の拡大が議論されている。主要な問題となっているのは、どの国がどのような地位で加盟するのか――永久的か交代制か、拒否権を持つかどうか――ということである。拒否権そのものの倫理性を問う声もある。いくつかの対立する提案が提出されており、結論はおそらくサミットより先送りされるだろう。このサミットで、女性たちは次のことを求める。
· とくにジェノサイドや人道に対する罪に関連して、五大国の拒否権を制限すること。
· 透明性、アカウンタビリティ、加盟国・国連諸機関・国内・国際レベルで活動する市民社会間のいっそうの協力に基づき、安保理のより民主的な運営手法を実施すること。

C. 人権

●より大きな権限を備えた人権理事会

サミットのプロセス全体を通じて、人権は貧困撲滅と平和・安全保障とを統合するフレームワークであるとされている。しかし、この人権というフレームワーク自体が攻撃を受けていることが多い。人権システムの地位を引き上げるため、事務総長は現在の国連人権委員会を、より高い地位と総会で選出された委員による人権理事会Human Rights Council に置き換えることを提案している。この改革が前進するとすれば、女性たちは次のことを要求したい。
· これまで国連人権委員会、とりわけ人権小委員会と特別報告官(特定の人権問題に関する国連の専門家とワーキンググループのシステム)が、人権議論の水準を高める上でなした貢献を守ること。
· 女性にとってとりわけ重要な分野――女性に対する暴力、性的権利、先住民とマイノリティの権利、教育と健康に対する権利、医薬品へのアクセス、その他の経済・社会・文化的権利――において、これまで委員会がなした貢献を尊重すること。
· 特別手続きspecial proceduresを維持し、いくつかの国が、経済・社会・文化的権利及び女性の人権にとって特に重要な領域から関心を逸らすために、委員会の焦点を、市民的・政治的権利および「もっとも著しい侵害」だけに狭めようとすることに抵抗すること。
· 提案されている理事会において、広範囲の市民社会の参加を引き続き保障すること。
●人権改革のためのより多くの資源と、既存の条約の報告システムの保護

女性たちは、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および提案されている条約機構改革の資源を拡大するよう各国に促す。OHCHRへの資源追加によって報告機能を強化し、社会・経済・文化的権利を含む、女性にとって重要な広い人権領域への焦点を保つことができるだろう。さらに、条約気候による報告の合理化は、政府の側の不必要な二重の手間をなくすことができるかもしれないが、特定のグループに影響を与える人権侵害の報告に対して国家の説明責任が果たされなくなる恐れもある。女性たちはとくに各国に求める。
· 条約機構改革が、女性差別撤廃委員会(CEDAW)、子どもの権利委員会、人種差別撤廃委員会に対する詳細な報告を脅かすことのないようにすること。

●「保護の責任」の概念にジェンダー視点を導入すること

この世界サミットは、世界のリーダーたちが「保護の責任(R2P)」概念を承認する初の実質的な機会になる。この概念は、バルカン半島とルワンダにおける大規模な残虐行為に対して国連が有効に対処できなかったことから2001年に提唱されたものだ。R2Pは、ある国家がジェノサイドや民族浄化を停止したり避ける意思や能力がない場合に効力をもち、国家内政不介入の原則を超えることになる。NGOは、たとえ規制の下であろうと、ある国が他の国のことに関して武力を用いることを許すような規定を含む規範を推進することに関しては消極的である。なぜならそのような規範は、力のある国が他国を侵略する言い訳に使われる恐れがあるからだ。さらに女性グループは、紛争下における女性の状況に対する注意が、現在のR2Pの規定に欠落していることに懸念を表明してきた。もしこの概念がサミットにおいて承認されるのであれば、次のことを求めたい。
· この概念の採用及び実行においては、平和構築において女性が重要な役割を果たすべきとする、女性と平和、案是保障に関する安保理決議1325号の規定を確実に含むべきこと。
· R2P の原則は、ジェノサイドや人道に反する罪からの保護という適切な文脈において用いられるものであり、小国の内政への不適切な介入のための口実に使われるべきではないこと。

D. 国連改革

●国連の強化には、グローバルガバナンスの根本的変化が必要だ

世界サミットの主要な目的は、第二次世界大戦後に創設されて以来ほとんどそのままになっている国連システム改革の改革である。女性グループ及び他の市民社会組織は、国際社会における意思決定の「民主主義の赤字」を正すためのいくつかの重要な問題が取り上げられていないことに非常に失望している。女性たちはさらに、すでに2005年にもなって、才能ある女性たちが国連の高い地位に男性と同じ数だけ採用されてもいい時期だろうと考える。女性たちは以下のことを求める。
· 世界銀行、IMF、WTOを、国連の監督の下に置くための手続きを講じること。現状においては、これらの金融・貿易機関の権力はいかなるチェックも受けないまま、主にアメリカとヨーロッパ(、日本)の手に握られており、説明責任、透明性、民主主義の欠如を招いている。
· 多国籍企業の説明責任の必要について取り上げること。現在、多国籍企業は適切な規制、監督、説明責任を欠いたまま操業しており、グローバルな開発と人権規範を無視している。
· 高い地位につく女性の割合を実質的に拡大させ、国連事務局におけるジェンダー不平等を正すこと。国連のすべての政策及びプログラムにおいて女性のニーズと視点を反映させ、UNIFEMや女性の地位向上局(DAW)など特に女性のために設けられた国連部署の地位と資源を引き上げること。

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