国連人種差別撤廃委員会による最終所見
2014/09/01 8月20-21日、国連人種差別撤廃委員会が4年ぶりとなる対日審査を実施し、29日に日本政府に対する「最終見解」を公表した。委員会は、「慰安婦」問題や外国人労働者への差別問題、人身取引、外国人女性やマイノリティ女性に対する暴力、琉球、アイヌの人びとの人権情況等、約30項目にわたり是正を要求した。
今回の最終見解では、前回2010年に比べヘイトスピーチの記述が大幅に増加した。委員会はインターネットを含めたメディアでのヘイトスピーチや、官僚や政治家などによるヘイトスピーチに対して毅然と対処するよう求め、必要な場合は刑事訴追を行うことも求めている。外務省は「表現の自由」を理由に人種差別撤廃条約第4条を留保してきたが、委員会からは「人種差別の煽動は『表現の自由』には含まれない」という意見が相次ぎ、法規制や人種差別撤廃法の制定が要請された。
「慰安婦」問題については、被害者の人権侵害状況について調査を行い、被害者の正義を実現すること、政府による公的な謝罪、賠償も含めた包括的かつ公正で持続可能な問題解決を行うこと、被害者の尊厳を損ね、事実を否定するあらゆる取り組みに対して適切な措置を採ることを要求した。
移住労働者の人権状況については、アジア女性資料センターも取り組んでいるILO189号条約の批准についても新たに勧告に盛り込まれた。移住労働者の権利に関し、日本政府は前回2010年にも移住労働者権利条約の批准について勧告を受けている。今回、委員会は外国人技能実習生の人権状況について懸念を示し、制度改革のための措置を採ることを求めた。また、雇用及び入居における移住者への人種差別をなくし、就業状態の改善のための法的措置を強化するよう求めている。
また、今回初めて、地方自治体の朝鮮学校に対する補助金削減について是正を求める勧告がなされた。朝鮮学校の「高校無償化」制度排除に加え、補助金削減の措置が子どもたちの教育権を侵害するものであるとした。委員のひとりはこうした問題を「人種主義の問題、人権の問題」であり、差別であると指摘した。
7月の国連人権委員会でも、日本政府はヘイトスピーチや「慰安婦」問題について是正を求められたばかりである。国内に山積するさまざまな人権問題の解決のために、日本政府は迅速な対応が求められている。
★国連・人種差別撤廃委員会(CERD)の日本政府に対する総括所見本文(PDF・英語)は以下のURLからダウンロード
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【報道】
●朝日(8/30)ヘイトスピーチ「法規制を」 国連委が日本に改善勧告
●ハンギョレ新聞(8/25)国連差別撤廃委員会 参観記:モーリシャスの委員の言葉に目頭が熱くなる