セクハラ発言に対する懲戒処分は妥当:最高裁判決
2015/02/272月26日、1年以上にわたり言葉によるセクハラを繰り返した管理職の男性社員に対する出勤停止の懲戒処分、一般職への降格処分が妥当であったかが争われた裁判で、最高裁は「女性に強い不快感や屈辱感を与える極めて不適切な発言で、職場の規律に及ぼす有害な影響は看過しがたい」とし、処分は妥当であったとする判決を下した。
大阪市の水族館「海遊館」運営会社に勤務する女性派遣社員2名が被害を会社に届け出たところ、会社側は課長代理の男性職員2名から事情を聴取したうえで、30日と10日の出勤停止と係長への降格処分を行ったが、男性らは事前警告もないままに突然処分が行われたとして「処分が重すぎる」と主張していた。
一審は処分を妥当と認めたが、二審は女性から明確な拒否の姿勢が示されておらず、セクハラに対する具体的な処分方針を認識する機会がなかったとして処分を無効とした。最高裁は、男性2名が会社が実施するセクハラ防止研修に参加していた経緯を認め、「管理職として勤務先の方針を認識すべき立場にいた。セクハラは1年以上他人のいない状況で継続しており、事前警告の機会があったとも言えない」と判断。また被害者が人間関係の悪化を懸念し加害者への抗議や会社への被害申告を躊躇うことは少なくないとして2審処分が誤りだと認めた。
女性社員たちが受けたセクハラ発言は、「夫婦はもう何年もセックスレスやねん」、「彼氏おらへんのか?」「結婚もせんで何してんの?親泣くで」「夜の仕事とかせえへんのか?時給いいで」「男に甘えたりする?女の子は男に甘えるほうがいいで」「もうお局(つぼね)さんやで。怖がられてるんちゃうん」「俺の性欲な年々増すねん。なんでやろうな」など。身体に触るなどの身体的な被害に比べて軽視されることが多い言葉によるハラスメントだが、今回の判決は、相手に不快な思いをさせる性的な発言はセクハラであり、義務を負う企業側の対応の必要性を認めた重要なものだ。
1986年に施行された男女雇用機会均等法は企業にセクハラ対応を義務付けているが、全国の労働局雇用均等室に寄せられたセクハラ相談件数は、2011年度8061件、12年度6387件、13年度6183件と、職場での性差別等に関する相談の約半数を占め続ける。
【報道】
●NHK(2/26) 最高裁「ことばのセクハラ」懲戒処分は妥当
●毎日新聞(2/27) 言葉のセクハラ 警告なしでも処分妥当 管理職敗訴 最高裁