アメリカ:「スラットウォークLA」開催
2015/10/22 2015年10月3日、ロサンジェルスで女性に対する性暴力反対運動「SlutWalk(スラットウォーク)」の行進が行われた。著名モデルのアンバー・ローズが率いたということもあり、単純に彼女を一目見たいと参加したファンたちや、ローズとつながりのある有名人たちの顔も見られ、数千人もの参加者が集まった。他の地域で行われてきたスラットウォークのように、今回の参加者もレイプ被害者やセックスワーカーたちが中心となった。また、ラップミュージシャンのニッキー・ミナージュは今回の運動のために5千ドル(約60万円)を寄付した。
参加者たちのほとんどは女性で、トップレスや、派手なコスチュームを着た女性たちが多くいた。参加者たちが掲げるプラカードには「レイプは服装のせいで起こるものじゃない」、「私のミニスカートはお前と何も関係ない」、「愛してるからと言われても信じるな。愛はあなたを傷つけない」など、さまざまなメッセージが書かれていた。また、今回はライブミュージックやポエトリー・スラムという詩の朗読の演出も行われた。
スラットウォークは2011年にトロントで始まり、北アメリカに限らず、南アメリカやヨーロッパ、アフリカ、そしてアジアなどの国々で行われてきた。この運動は、女性が何を着ていたかなど、服装によって性暴力被害の責任を被害者本人に負わせてはならないという認識を広げることが目的だ。また、歴史的に女性を蔑むために使われてきた「スラット」という言葉を取り戻すことも目的の一つとなっている。
「スラット」とは英語圏では女性を軽蔑するために使われる罵り言葉。日本語でもっとも近い言葉は「淫乱女」、「尻軽女」、「ヤリマン」といったところだが、「スラット」は口にするのもためらわれるようなかなり強い印象を持つ。同じように性的に活発な男性を侮辱する言葉はほぼない。女性に限って「貞淑さ」や「清純さ」を求める風潮は社会に蔓延っている。
スラットウォークの発端となったのは、「性被害に合いたくなければスラットのような格好をしないことだ」という警察官による発言だ。「スラットのような女性は性被害に合って当然」とでも言うような暴力的なメッセージを含んでいる。また、セックスワーク産業に携わる女性たちが暴力の対象となって当然だと思う人は少なくない。元ストリッパーで何度も侮蔑的な言葉を投げかけられた経験があり、主催者の一人であるアンバー・ローズは、今回の行進で「Strippers have feelings too(ストリッパーにだって感情はある)」というプラカードを掲げた。また、彼女はインスタグラムに「slut? only when I want to be(スラット?私がなりたいときだけね)」と書かれたシャツを着た自身の写真を投稿した。
しかし、同じく性暴力を根絶しようと活動している女性たちの中でも、「スラット」という言葉の使用についての意見はさまざまであるという。どれだけ肌を露出していようと、性的に自由な生活を送っていようと、自分は「スラット」ではないと主張することこそが女性の解放に繋がると考える女性は少なくない。インターネット上でも、女性に対する軽蔑的な言葉の使用を促すことに対して否定的な意見がみられた。このように「スラット」という言葉の使用については様々な議論があるため、今回の運動の主催者たちはパネルディスカッションの場を設け、運動内の問題について話し合った。
【参考】
●SlutWalk LA 公式ウェブサイト
●SlutWalk LA フェイスブックページ
【報道】
●CNN “Amber Rose’s SlutWalk sparks debate”
●LA Times “Hundreds join Amber Rose at Pershing Square for SlutWalk”