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アメリカ:トランプ大統領が反中絶大統領令に署名

2017/01/24

2017年1月23日、ドナルド・トランプ新米大統領は人口妊娠中絶に関する支援を行う国際NGOへの政府による助成を禁止する大統領令に署名した。
ホワイトハウスのショーン・スパイサー広報担当は記者会見で「大統領が『プロライフ派』であることは明らかなことであり、これから生まれる子どもたちを含むすべてのアメリカ人のために行動したいと考えている。この大統領令は彼の価値観を反映したものであると同時に、正しい納税者の資金の使い道を示すものである」と述べた。
人工妊娠中絶を含むリプロダクティブヘルス/ライツの支援を行う国際NGOへの助成を禁止する今回の大統領令は「メキシコシティ・ポリシー(Mexico City policy)」として知られ、1984年のロナルド・レーガン政権時に初めて発令された。民主党のビル・クリントン政権時には撤廃され、共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領政権時に再発令、民主党バラク・オバマ政権で再び撤廃されるなど、政権交代のたびに発令と撤廃が繰り返されてきた。
人口妊娠中絶に関する支援のハードルは非常に高く、オバマ政権でさえも用途を中絶に絞った政府助成は禁止されていた。今後、リプロダクティブヘルス/ライツや家族計画に関する支援を行ってきた国際NGOは、最も大きな資金源である政府からの援助が望めなくなってしまう。この大統領令により危険な方法で中絶を行わざるを得なくなる女性や少女たちが増えるなど、とくに途上国や紛争地域における状況は非常に厳しいものになることが予想される。WHOによると、途上国では年間2000万人以上の女性たちが安全ではない人工妊娠中絶を行っており、うち13%は死亡している。
民主党議員や女性の権利に関する活動家らは迅速に反応している。プロチョイス推進団体「NARAL (National Abortion and Reproductive Rights Action League)」のアイリス・ホーグさんは「この政策は、ドナルド・トランプによる女性に対する蔑視のあらわれであり、性と生殖に関する適切なケアを必要とする世界中の女性やその家族を、より深い困難に陥れている」と話した。
トランプ大統領による女性やマイノリティに対する差別発言はすでに広く知られているが、就任後直後からさらに保守色を強めていることが懸念される。就任直後、ホワイトハウスのウェブサイトから、オバマ政権時に追加されたLGBTの権利に関するページが削除された。また、「気候変動」や「地球温暖化」に関するすべての言及も削除されている。人権活動に関連するページも就任前とは別の内容に変わった。現在はまだトランプ大統領の正式なウェブサイトに移行中であるが、今後、これらのページが復活するかどうかはわからない。
今回の大統領令への署名直前には、トランプ大統領による女性差別発言に抗議する女性たちによる大規模なデモ「女性大行進(Women’s March)」が全米各地で行われた。女性大行進は環境保護、障害者、移民の権利など、さまざまな問題に取り組む幅広い団体の賛同を集めて世界中に広がっている。500万人もの人々が参加した歴史的なデモの直後に発令された女性の権利を奪う反中絶大統領令への抗議の声は今後さらに広がり大きくなっていくだろう。

【報道】
●The New York Times(1/23)Trump Revives Ban on Foreign Aid to Groups That Give Abortion Counseling
●The Huffington Post(1/23) Donald Trump Signs Anti-Abortion Executive Order Surrounded By Men
●東京新聞(1/24)トランプ大統領、中絶政策を転換 助成金支出禁止、保守色鮮明に

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