【書籍紹介】「女が先に移り住むとき」
2012/04/16女が先に移り住むとき―在米インド人看護師のトランスナショナルな生活世界 (2011/12) シバ・マリヤム ジョージ |
女が看護師という専門職でインドからアメリカに最初に赴き、一家の稼ぎ主になると、あとから来た夫や親戚は、事情通である彼女に頼らなくてはならない。こうした状況で、家父長制は消滅するのか?それとも、あいかわらず再生産されるのか?というのが本書の問いである。これに答えるためには、家庭での家事や育児の分担、インド正教会でのコミュニティ活動など、複数のジェンダー化された領域の相互作用をみなければならない。加えて、「汚らわしい仕事」という看護師のスティグマは、インドのケーララからアメリカへとトランスナショナルに再生産されるのだ。労働領域で女性が経済的な地位上昇を達成しても、他領域における女性の地位上昇にはつながらないという現象は、移民に限定せずともみられる。その意味で、本書はジェンダー関係の普遍的な問題を扱っているといえる。