【書籍紹介】「国境を超えるアジアの家事労働者ー女性たちの生活戦略」
2012/04/05国境を越えるアジアの家事労働者ー女性たちの生活戦略 (世界思想ゼミナール) (2011/12/13) 上野 加代子 |
経済成長が著しいシンガポールでは、女性の就労率や出生率をあげるため、ケア関連の福祉政策を充実させるかわりに、海外から家事労働者を雇用しやすくする政策がとられてきた。こうしたグローバルな家事労働者の調達が、民族、国籍、階層が絡まりあう搾取的構造であることは間違いない。しかし、シンガポールで働くインドネシア人とフィリピン人の住み込み家事労働者を10年近く追いかけた上野は、彼女たちの人生の重要な局面での決断、困難な状況で編み出す種々の奮闘などを生き生きと描き出すことによって、彼女たちが抑圧的な権力構造の単なる犠牲者ではないことを明らかにしている。家事労働者を保護する労働法制が不十分な状況でも、彼女たちは家事労働者同士のつながりを有効に使い、様々なアイディアを駆使しながら自分の安全を守り、人生を切り開こうとしているのだ。