朝鮮学校「無償化」裁判 大阪高裁が不当判決
2018/09/28 2010年にスタートした「高校無償化」制度から日本政府は朝鮮高校を完全除外しました。現在、この不当な暴挙に対し、全国5か所で法の適用を求める裁判が闘われています。
2017年7月、大阪地方裁判所は、文科省の処分は違法であり無効だと判断し、支給対象校に指定することを義務づける判決を言い渡しました。
しかし、2018年9月27日、第2審の大阪高裁はこの判断を覆す不当判決を言い渡しました。この判決を受けて、大阪朝鮮学園と「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」が声明を発表しています。許可を得て下記に掲載します。
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大阪朝鮮学園 声明文
大阪朝鮮学園は、「高校無償化」の適用を求めて日本国を相手どり、2013年1月24日に提訴し、4年6ヶ月、16回に及ぶ口頭弁論を経て、昨年の7月28日に第一審の大阪地方裁判所において歴史的勝利を勝ち取りました。
にもかかわらず、国は、非を認めるどころか、昨年8月10日に控訴しました。
私は、本日の大阪朝鮮学園の全面的勝訴の原判決を破棄し、国側の逆転勝訴という不当な判決を言い渡した大阪高等裁判所に対して強い憤りを覚え、悔しさで震えが止まりせん。決して容認することが出来ません。
政府自らが、政治的判断や外交上の問題ではなく、教育上の観点から客観的に判断し、「すべての意志ある高校生」が対象であるといっておきながら、「砲撃事件」や「拉致問題」を口実に、朝鮮高級学校10校だけを適用から除外していることは、法治国家・先進国を謳い、国際化、共存・共生の社会を目指す、日本に於いて、大きな汚点となることでしょう。
司法の役割は、政治情勢や政府の意向に忖度することなく、人権や教育の権利、学習権、こどもの権利などを保障するための、正しい判断を下すことだと思います。
日本政府に対して、朝鮮学校に「高校無償化」制度の適用と、地方自治体には補助金の再開・維持を要請している国連人種差別撤廃委員会の3回にわたる勧告をも無視した今回の「判決」は、決して許されるものではありません。
朝鮮学校だけを公的助成制度から排除することは、民族教育の権利を否定する、不当な差別であるばかりか、「在日朝鮮人は差別されて当然」という風潮を煽るものであり、国家による我々や朝鮮学校で学んでいる子どもたちに対する「いじめ」そのものです。
なぜ、自国の言葉や文化、歴史を学ぶことが否定されなければならないのでしょうか。
朝鮮学校で学んでいる生徒や子供たちだけが、なぜ、差別を受けなければならないのでしょうか。子供たちの笑顔を奪わないでください。
大阪朝鮮学園は今回の不当判決に対して激しい怒りをもって、強く抗議します。
そして、ただちに上告し、最後まで、そして、勝利する日まで闘い続けます。
大阪朝鮮学園の主張の正当さ、民族教育の正当さは、必ず歴史が証明してくれることでしょう。
政府、司法、行政、一部マスコミが一体となって、行っている「民族差別」、「いじめ」は世界にも類を見ない悪行・蛮行です。
私たちは、今後も「高校無償化」制度の適用と大阪府・大阪市の補助金交付を求めて闘い抜きます。
朝鮮学校で学ぶ、子どもたちの笑顔、明るい未来のために!
みなさまのより一層のご支援をよろしくお願いいたします。
以上
2018年 9月 27日
学校法人 大阪朝鮮学園
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声 明
学校法人大阪朝鮮学園が国を相手取り、いわゆる「高校無償化」制度にもとづく就学支援金支給の不指定処分取消しと、同学園の指定義務づけを求めた裁判において、本日、大阪高等裁判所第13民事部は原判決を破棄し国側逆転勝訴の不当判決を言い渡しました。司法が安倍政権の意向を「忖度」したかのような判決内容を、私たちは決して認めることができず、怒りをもって強く抗議します。
さる2017年7月28日に大阪地方裁判所が言い渡した第一審判決は、大阪朝鮮高級学校に対する不指定処分について、当時の下村博文文部科学大臣が裁量権を逸脱、濫用したもので違法、無効であり、同校は法令に基づき適正に運営されていると認めました。しかし一方で、広島・東京・愛知の裁判では、各地裁は国側の主張を丸呑みにし、文科大臣の広範な裁量権を認める不当判決が宣告されました。
大阪地裁での全面敗訴に慌てた国は、控訴理由書で朝鮮総聯の「反社会的組織」としての性格を強調し、総聯の「不当な支配」を受けている疑いがある朝鮮高級学校の教育内容は、教育基本法の理念に反するとの主張を執拗に展開しました。本来、教育の機会均等を目的とするはずの「高校無償化」制度の適用において、植民地宗主国の意識に満ちた公安警察のような観点をもって、朝鮮学校に対する差別を正当化しようとしたのです。
さる8月30日には国連人種差別撤廃委員会が2014年に続き、日本政府に対して朝鮮学校に「高校無償化」制度を適用するよう再び勧告しました。また今年に入り3回にわたって南北首脳会談が開催され、6月12日には初の朝米首脳会談が実現しました。東アジアの国際環境は平和と和解へ向かって大きく舵を切る一方で、日本政府の差別政策を批判する国際世論はますます高まっているのです。しかるに、時代の趨勢に逆行するかのような今回の控訴審判決は、安倍政権のレイシズムを体現する国側の主張を支持するものであり、断じて許すことができません。日本政府は東アジアの平和構築に貢献し、過去の植民地支配への責任を全うするために、朝鮮学校に対する「いじめ」の政策を即刻中断しなければなりません。朝鮮高級学校への「高校無償化」制度適用はもちろんのこと、地方公共団体への補助金交付に圧力をかけた2016年3月29日の文科省通知は撤回されなければなりません。
私たち「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」は2012年3月の結成以来、原告の大阪朝鮮学園、生徒・保護者をはじめとする学校関係者、および原告弁護団の方々と手を携え、この困難な裁判闘争に取り組んでまいりました。そしてこの間、大阪はもとより日本全国の心ある方々から、また韓国から、朝鮮から、大きな激励をいただきました。にもかかわらず、このような残念な結果をご報告しなければならないことを、まことに無念に思います。
しかしこのような不当判決に、私たちが屈することはありません。私たちはいっそうの覚悟をもって、すべての朝鮮高級学校に対する「高校無償化」制度の適用、そして大阪府ほか地方公共団体の補助金交付再開を求め、最後まで闘い抜く決意をここに改めて表明します。とくに係争中の広島、東京、愛知、福岡をはじめ、志を同じくする日本全国や海外の仲間たちと固く手を結び、上告審に向けて朝鮮学校をいっそう力強く支援していきます。いまや瀕死の状態にある日本の民主主義と基本的人権を守り抜くためにも、朝鮮学校への差別政策に反対するすべての方々のさらなるご支援をお願いいたします。
2018年9月27日
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