佐賀地裁の判決に対する抗議文
2003/11/11私たちは、女性が性暴力の加害者であった父親を殺害した事件に関する、10月6日の佐賀地裁の判決に抗議します
佐賀地裁では、性暴力が殺害の原因の一部であったことを認めながら「直接的動機は自殺を邪魔されたことであり、本件で重視するのは適当でない。」としました。ただでさえ女性が性暴力被害を訴えにくい社会の中で、この判決は、女性への暴力、とりわけ父親による性的虐待が被害者の心身に及ぼす犯罪性への裁判官の認識の欠如、あるいは無理解に基づくものであり、判決そのものが、女性の人権を侵害するものとして私たちは受け入れることはできません。
過去において、ドメスティック・バイオレンスの被害者であった女性が、暴力から逃げるために夫を殺害した事件で情状酌量の上「有罪だけれど処罰するには忍びない」という事で、即日放免となったケースはあったものの、いまだに裁判所の女性の人権に対する認識があまりにも低いことに怒りと哀しみを感じます
本来子どもにとって安全であるはずの場所で、父親から受ける性暴力は女性にとって非常につらく、苦しく、哀しいことです。性暴力は加害者にとってはその場限りのことですが、被害者にとっては永遠に消えない心身の痛みとして残り、そこから生き延びる力を再び取り戻すために大変な勇気と努力が必要です。今回の判決は、そのような暴力の記憶から逃れるために父親を殺さなくてはならなかった被害女性の苦しみ、女性に対する性暴力に関する司法の認識の低さ、欠如を示したものです。
私たちは、佐賀地裁の判決に対し厳重に抗議します。
2003年11月10日
アジア女性資料センター
運営委員・事務局一同