アドボカシー・キャンペーン

プレスリリース:ジェンダー暴力に関する第38回国連拷問禁止委員会勧告を歓迎し日本政府に全面的かつ速やかな勧告受け入れを求める

2007/05/22

先日閉会した第38回国連拷問禁止委員会は、2007年5月9日~10日に行われた、日本における拷問その他の非人道的取り扱いに関する日本政府の第一回報告の審査に関する最終見解を5月22日に公表しました。
最終見解は、代用監獄や死刑等の問題とならんで、旧日本軍性奴隷制(いわゆる「慰安婦」)、人身売買、警察による暴力、米軍基地周辺の性暴力などの女性に対する暴力の横行が、日本が1999年に批准した拷問禁止条約の義務のいくつかに反すると明確に指摘しました。委員会は日本政府に対し、ジェンダーに基づく暴力を防止し、これら暴力の根本にある差別をなくすような教育を行うよう勧告しています。
今回の委員会勧告は、政府の中からも「慰安婦」の強制性を否定したり、「産む機械」など女性の人権を軽視する発言が続いている現状に対し、強く警鐘を鳴らすものといえます。
アジア女性資料センターは、政府報告には女性の人権の視点がまったく欠けていたにも関わらず、日本におけるジェンダー暴力および性暴力について、委員会が特別の関心を払われたことを歓迎します。そして、日本政府が委員会勧告を真摯に受け止め、速やかに是正措置を講じるよう、国内女性グループ、市民団体、および国際人権団体とともに、強く求めます。
特に、「ジェンダー暴力および人身売買」に関連する勧告に対する回答を1年以内に行うようにという委員会の要請(パラ30)について、期限どおりに、誠実かつ詳細な報告を行うよう求めます。

●旧日本軍性奴隷制(いわゆる「慰安婦」)

委員会は、旧日本軍性奴隷制被害者に対する適切な救済の欠如を指摘したばかりでなく、「締約国が公式に事実を否認し続け、真実を隠匿あるいは公開せず、虐待の刑事上の責任者を訴追せず、適切なリハビリテーションを提供しないことによって、被害者およびサバイバーに対し苦痛と心の痛手を負わせ続けている」と指摘しました。そしてこれは、拷問およびその他の非人道的扱いを防ぐという政府の義務違反であると指摘しています。委員会は、性暴力およびジェンダー暴力の根本にある差別をなくすための教育と、被害者のリハビリテーション★、加害者の不処罰を防ぐ手段を講じる勧告しました。(パラ23)

★これは単なる健康の回復だけではなく、社会復帰、職業訓練などを含む概念。ケースによっては、PTSDのケアや治療を含む心理的サービス、法的サービス、生活水準の保障や職業訓練といった社会的サービスを含む高度な援助である。

また委員会は、拷問その他の非人道的行為が時効の対象とされていることに懸念を表明し、特に「慰安婦」被害者の訴訟が除斥時効を理由として却下されていることを遺憾としました。委員会は、拷問禁止条約の義務にしたがって既存の法を見直し、拷問に当たる行為については時効なく、加害者の調査、訴追、処罰を行うよう勧告しています。(パラ12)

●人身売買
委員会は、人身売買はいまだに重大な問題であり、被害者保護の不十分さのため、被害者が不法移民として、必要な救済措置を受けないまま送還されていると指摘しました。委員会は、エンターテイナービザの悪用を防ぐため規制を強化し、十分な資源を配分し、関連刑法を厳格に施行するなど、人身売買の防止対策を強化するよう勧告しています。(パラ24)

●基地周辺の性暴力
委員会は、基地周辺における外国軍人による女性・少女に対する暴力について、防止や被害者救済のための適切な手段が欠けていると指摘し、外国軍人による性暴力被害者をはじめ、すべての被害者に法廷で救済を求める権利を保障するよう勧告しました。(パラ24)

●被拘禁者への性暴力、強姦の定義
委員会は、拘禁中の女性・子どもに対する警察官・刑務官等による性暴力について懸念を表明しました★。また、刑法強姦罪の「強姦」の定義に、性交以外の形態の性暴力や、男性に対するレイプが含まれていないという問題も指摘しています。委員会は、女性の権利や被害者のニーズについて、法執行官や裁判官の訓練を行い、また警察に専門部署を設置して、安全なシェルターや心理的ケアなど、被害者によりよい保護とケアを提供するよう勧告しました。(パラ24)

★「性暴力およびジェンダー暴力」は、女性・少女に対する暴力だけでなく、男性・少年に対する性暴力や、性的志向を理由とする暴力も含まれます。

●人権教育・トレーニング
委員会は、法執行官の訓練に使われているすべての教材を公表することとともに、法執行官や裁判官に、特に女性や子どもの人権に配慮した人権教育を行うことを求めました。また、特に「慰安婦」問題について、「教育(条約第10条)と被害者の救済(第14条)は、それ自体、締約国のさらなる義務違反を防ぐ手段である」と述べ、「性暴力およびジェンダー暴力の根本にある差別をなくすような教育」を行うよう勧告しました。

問い合わせ:アジア女性資料センター
TEL:03-3780-5245 FAX:03-3463-9752 

★ アジア女性資料センターでは、日本国内の女性グループおよびWorld Organization Against Torture(OMCT)の支援を受けて、女性に対する暴力に関するシャドウレポートを提出したほか、他の市民団体とともにジュネーブでロビーイングにあたりました。

参考資料
●第38回拷問禁止委員会 日本報告審査の最終見解(英語)
http://www.ohchr.org/english/bodies/cat/docs/AdvanceVersions/CAT.C.JPN.CO.1.doc
●最終見解日本語訳(暫定訳)
https://www.ajwrc.org/doc/CAT2007/zantei.pdf
●アジア女性資料センターの「日本における女性の権利侵害」シャドウレポート(英語)
https://www.ajwrc.org/doc/CAT2007/CAT0405_Japan%20FINAL.pdf
●アジア女性資料センター提出レポート要約・日本語版
https://www.ajwrc.org/doc/CAT2007/AJWRCreportsummary.pdf
印刷用ページ

DOCUMENTS