【COVID-19とジェンダー】Covid-19による世界中での休校措置、女子に最も大きな打撃をもたらす
2020/05/07COVID-19とジェンダー 翻訳記事
以下は、Plan Internationalの専門家によるブロク記事の全訳です。
ユネスコの推定では、現在Covid-19による学校の休校措置のため、世界の児童・生徒・学生総数の89%以上が学校に行っていない。これは、小学校から大学まで15億4000万人の子供と若者に相当し、うち女子は約7億4300万人である。
この女の子たちのうち1億1100万人以上が住むのは、教育を受けること自体が並大抵のことではない後発開発途上国、すなわち世界的に見て極度の貧困、脆弱な経済、経済危機という状況にあり教育におけるジェンダー格差が最も高い国々である。マリ、ニジェール、南スーダン(女子の就学率と修学率が最も低い部類の3か国)では、休校により400万人を超える女の子が通学できなくなった。
「友人の多くは妊娠していますし、まだ早いのに結婚させられた子もいることに気づきました。」
難民キャンプの住人であったり国内で避難民になったりしてすでに不利な立場にいる少女にとって、通学できなくなることほど大きな打撃はない。中学・高校の年齢の避難民の女子は、男子に比べ学校で勉強できる可能性が半分しかない。
Covid-19については、その経済的影響がやっと理解され始めたところだが、その広がりと甚大な影響が予想されており、特に女性と少女への影響が懸念される。社会的保護政策が十分に実施されていないグローバルサウス(南半球の発展途上国)では、今回の危機によって経済的に困窮すると、各家庭で娘の教育にかかる金銭面のコストと機会コストを意識するようになるという派生的な影響が出ると思われる。
学校が再開すれば教育を受け続ける女の子も多いが、それっきり学校に戻らない女の子もいるだろう。教育関係者は思春期の少女のニーズを優先して対応しなければならない。過去20年間で達成された女子教育の前進が逆行するリスクがかかっている。
エボラ出血熱危機からの教訓
Covid-19危機がもたらした衝撃の大きさは前例のないものだが、私達はアフリカのエボラ出血熱の大流行から学んだ教訓に目を向けることができる。流行のピークの時期には、最も状況が深刻であったギニア、リベリア、シエラレオーネの3カ国で、合計500万人の子供が学校の休校措置の影響を受けた。そして教育が中断されている期間中、貧困レベルは大幅に悪化した。
[写真キャプション] 女子教育はCovid-19危機によって重大な影響を受けることになる。
多くの場合、学校を中退したのは、家事と介護の責任が増したため、また収入を得るために働くようになったためだ。これは、プラン・インターナショナルの分析に示されるように、女の子の家での学習が制限されたことを意味している。「女子クラブ」が確立され以前から女子教育を奨励しようと啓蒙活動に取り組んでいた村々では、悪影響を経験する女の子の数は比較的少なく、女の子が学び続ける可能性が高かった。
一部の研究によれば、休校中の女の子はしばしば大人のいない家に一人で留守番することになり、若者か年配かを問わず男性からの身体的、性的な暴力を受ける恐れがあり、女の子の脆弱性が増加するという。脆弱な立場にある女の子とその家族が基本的なニーズを満たすために奮闘している状況で、食物その他の必需品を求めて売春に追いやられる形の性的搾取も広く報告された。家族の大黒柱がエボラ出血熱で死亡し生計が立たなくなると、多くの家族は娘を結婚させることを選んだ。これで娘が守られるという誤った期待を抱いたのである。
シエラレオーネでは、エボラ出血熱の危機が続く間、コミュニティによっては思春期の少女の妊娠の増加率は65%にのぼった。ある研究において、ほとんどの女の子はこの増加が学校の安全な環境にいられなくなった直接的な結果だったと証言した。こうした女の子の多くはその後通学を断念している。これは主に、妊娠した少女の通学を認めない方針(最近撤回された)によるものだった。
エボラ出血熱の教訓をCovid-19に活かす
2014年エボラ出血熱危機の際、17歳のクリスティアーナは「学校は見捨てられた鳥の巣のように空っぽのままです。すごく悲しい。学校にいることで、女の子は妊娠と結婚から守られます。友人の多くは妊娠していますし、まだ早いのに結婚させられた子もいることに気づきました」と語った。
危機を経験してきたか現在経験中のクリスティアーナのような少女にとって、暴力と搾取からの保護を提供する教育は、明るい将来を開くスキルと希望をもたらすライフラインだ。
各国政府が無期限の学校閉鎖に備えるなか、政策立案者と実務者は過去の危機からの教訓を参考に、女の子が直面する具体的な課題に対処することができる。そのため私達は各国政府に対し、ジェンダーの視点に立ち、根拠に基づき、個別の状況に合わせた、以下の6項目の対策を講じて、女子教育におけるこれまでの取組みの成果を維持していくことを要求する。
・教師とコミュニティの活用
教師、学校スタッフ、およびコミュニティと緊密に協力して、遠隔学習が包摂的な方法で行われ、それが周知されて、女子の学習への投資が確実に継続するようにする。どのような遠隔学習プログラムにおいても、女子教育の重要性についてのコミュニティに対する継続的な啓発を含めるべきである。
・適切な遠隔学習の採用
デジタルテクノロジーによる解決策が利用しにくい状況では、ローテクで、ジェンダーの視点に立ったアプローチを検討する。読み書きの教材を家に送り、ラジオとテレビの放送を使うことで、最も主流から取り残された家庭にも届くようにする。プログラムのスケジュールと構成には必ず柔軟性を持たせ、家事の過重な負担を担うことの多い女の子が挫けることなく自分のペースで学習できるようにする。
・ジェンダーによるデジタル・デバイド
遠隔学習とインターネットを利用するためのデジタルテクノロジーによる解決策が利用可能な状況であれば、女の子がネット空間で身を守るために必要な知識とスキルをはじめ、必要なデジタルスキルの訓練を実施して確実に身に着けさせる。
・生命に関わるサービスの保護
学校が休校になると、女の子そして最も脆弱な子供と若者は生命に関わるサービスを失ってしまう。特に学校給食と社会的な保護を受けられなくなる。学校を、心理社会的サポートと食品配給のためのアクセス・ポイントとし、部門を超えて協働して代替の社会サービスを確実に提供するとともに、電話・メール・その他の媒体によるサポートを行う。
・若者の関与
若者、特に女の子が、若者の教育についての決定に参加できるようにする。休校措置と遠隔学習に関わる戦略と方針が若者の経験とニーズに基づいたものとなるよう、その開発に若者を参加させる。
・復学保証
学校が再開された時に、女の子が学校に戻ることを妨げられないように、学習面で柔軟なアプローチを提供する。これには、社会的な汚名を着せられ、中途入学に関する法律が差別的なこともあって教育へのアクセスを妨げられることの多い、妊娠中および若くして母となった少女を含む。
自動的に進級させると同時に、復学手続においては女の子が直面している特定の困難を認識して適切な機会を与える。復学した女の子には補習コースと加速学習が必要な可能性がある。
翻訳:川井孝子
原文はこちらから
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